柳楽優弥 撮影/伊藤和幸

「馬は大好きで、『許されざる者』という映画でお世話になった乗馬クラブの“師匠”と呼ばれている方が可愛がってくれたので、よく乗りに行ってたんです。ここ3年前くらいですね。その師匠から、“いつか大河の主役をやるために馬を買ったほうがいい”とすすめられて買っちゃいました。ただ、今回馬に乗るシーンはないんですけどね(笑)」

 憧れの大河ドラマ初出演への思いを笑顔で語る柳楽優弥(27)。大河ドラマ『おんな城主 直虎』(NHK総合 毎週日曜 夜8時ほか)で演じるのは、派手な衣装がひときわ目立つ龍雲丸。直虎(柴咲コウ)の恋心をくすぐり、次第に深くかかわっていくことになる盗賊団の頭だ。

「もともと柴咲さんのファンで同じ事務所に入ったくらいなので、この展開は非常に光栄です(笑)。1度、(小林)薫さんや財前(直見)さんに仕切っていただいて、みんなで食事会に行ったんです。普段、撮影していて、食事をしながら作品について話し合う機会ってあまりないじゃないですか。そういうことができるのは、長期間みんなで一緒にいられる大河ならではだなって思いました」

大河ドラマ『おんな城主 直虎』より (c)NHK

 盗賊団のメンバーは個性的な面々が勢ぞろい。そのため、撮影前は不安がよぎったんだとか。

「マキタスポーツさんや真壁刀義さんとか、みなさんキャラが強い人ばかりじゃないですか。なので、最初は“仲よくなれなかったらどうしよう”って本当に心配で。でも実際はすごくフレンドリーな方ばかりだったんです。最近は“真壁さんのプロレスの試合に行こう!”ってみんなで盛り上がっていて(笑)。軍団としてすごくいいチームになってますね」

 型破りなキャラクターながら、実は過去のある出来事にとらわれていて、その謎が次第に明らかになっていく龍雲丸。柳楽自身も演じるうえで、共感できる部分があると話す。

「僕も過去にとらわれた時期があって。14歳でカンヌ国際映画祭で主演男優賞をいただいて(是枝裕和監督の『誰も知らない』)すごくうれしかったんです。でも、10代後半になり同じ賞を取っているのが世界的にスゴイ活躍している人ばかりなのに気づき、かなうわけもないのに自分と無駄に比べてしまって……」

 そこから周りも見えなくなり、もがく日々を送ったが、やがて光が見え次第に出口が……。

「節目ごとにいろんな方々に出会えたことが、すごく大きかったです。いいアドバイスをいただいて考え方が変わってきて、これじゃダメなんだって思えた。だから今の自分があるんだし、それは本当に感謝しています」

再び注目を浴びる現在の心境は?

 本作のみならず、『フランケンシュタインの恋』や映画『銀魂』など、今年も話題作への出演が相次ぎ、再び注目を浴びる柳楽。

「今日の取材も以前とは違って、たくさん(媒体に)撮影していただいて、素直にうれしいです(笑)。

 撮影している作品が重なるときもあって、覚えるセリフの量がたくさんあるときもありますが、苦痛とか大変という認識はないです。それも含めて、俳優としての新たなステップアップと考えているので」

柳楽優弥 撮影/伊藤和幸

 そんな彼の視線の先には、こんなビジョンがあった。

「龍雲丸もですが、個性的な役柄を演じることはすごく楽しいですし、やりがいを感じます。ただ、普通のキャラクターを演じる難しさもあると思うんですよ。画面の中で主張しているわけじゃないけど、佇(たたず)まいだけでも映画が成立するような俳優さんになれたらなと思っていて。そういう意味でも、今回、共演させていただいている高橋一生さんは憧れの先輩。そのふり幅を自分の中で作り上げていければというのが僕の目標です」

 オフはこれでリラックス!

「基本的には家族と過ごすか、先輩の俳優さんたちと食事に行ったり、派手に動き回らず過ごしていますね。家族と馬に乗りに行ったりもしますよ。娘はまだ小さいからポニーですけど(笑)。乗馬は姿勢もよくなるし、気持ちにも気合が入るしすごくいいんですよ。リラックスできる瞬間ですね」