母親は指導に従い毎月1回、医療機関を受診していたという。事件直近の受診は、昨年12月20日だった。
上田知事は毎月の訪問の中で見抜ける眼力、直感力があればまた違った展開になったかもしれないと語ったが、行政が注意深く見守っていたにもかかわらず、その見抜く力が発揮されることはなかった。
「8か月の赤ちゃんは見たことがない」
担当した越谷児童相談所の草加支所所長は、
「児童相談所や市役所など複数の関係機関が連携し、家庭の養育上の支援をしていたということです。長女に関してだけでなく、ご家族を支援していた。昨年の7月に医師から情報提供を受けて同月に家庭訪問を開始しています」
と振り返った。
事件直前の1月11日には、同市の職員が上久保容疑者宅を訪問していた。
上田知事は「1月11日の訪問で様子が見れなかったことがちょっと残念ですね。このときに様子が見れていたら、外傷がわかったかもしれません」などと悔しがる。
草加市広報課によれば、訪問したのは虐待に対応する課の職員ではなかったという。
「別の業務を所管する職員が別件で訪問をしました。そのため、子どもを確認する要件ではなく、母親とのやりとりで終わるものでした。
複数の関係機関が連携して支援をしていたこともあり、所管する範囲の中で役割分担をしているということです。縦割りと言われればそうかもしれませんが……」(広報課)
激しく虐待をしている家があれば、親の怒鳴り声や子どもの泣き声といった異変が隣近所に漏れたりするものだが、上田知事は会見で「通報はなかった」と明かした。
上久保容疑者が住むアパートは築24年の軽量鉄筋2階建て。容疑者は1階に、長男(2)、長女と暮らしていた。近所の住民によれば、一家が引っ越してきたのは「2~3年前かな」という。
「男児と手をつないで買い物に行っていた」「Tシャツにジーパンで化粧もせずラフな感じ」という証言と同時に複数聞こえてきたのは、「8か月の赤ちゃんは見たことがない」という証言だ。