顧客を選び、育てる

 そんなお先真っ暗に思えるデパート業界だがどうすれば存続できるのか。小野さんは「むしろ“ブランド力”を使うこと」という。

 どういうことなのか。

一般消費者ではなく、富裕層やインバウンド向けの商品やサービスをもっと充実させることです。実は、“デパートはオワコン”ではありつつも、新宿伊勢丹と阪急うめだ本店の2022年度の売り上げは、バブル期を超え過去最高収益を出している。両店とも、主な売り上げの内訳は高級ブランドの衣料やバッグ、宝飾品といった、富裕層向けの商品です。また、デパート側が特定の顧客の元に直接出向いて販売する『外商』も好調で、ステータスを求めて顧客になりたいという20代、30代が増えているほど。

 つまり、デパート側がお客を選ぶ姿勢を見せたり、いい顧客を“育てる”ことが肝となりうるのです」

消費者によるECサイトの利用増加などで客足が遠ざかっている百貨店業界 ※画像はイメージです
消費者によるECサイトの利用増加などで客足が遠ざかっている百貨店業界 ※画像はイメージです
【写真】世界の老舗デパート買収を進めるタイのグループがヤバい

 もうひとつは、「海外のデパートグループにあえて買収してもらうこと」だという。

今、タイの『セントラルグループ』という企業は非常に勢いがあり、イタリアやスイスの老舗デパートを傘下にしています。彼らは今回『そごう・西武』を買収した不動産系投資ファンドとは違い、デパートと、その中に入っているブランド店の価値をわかったうえで買収している。例えば西武の場合、『コムデギャルソン』や『イッセイミヤケ』といった、世界的に人気のある日本のブランドを発掘した実績があります。そういう伝統と信頼を、まだ百貨店事業の歴史の浅いグループに“買って”もらうのです」

 経営サイドが、まずは意識改革をしなければならないことは確かだろう。