特定の香りが認知症の予防や改善に効果
結局私たちが今できる最善策は将来、認知症を発症しないために、できるだけアミロイドβをためないような生活を送ることだ。
「質の良い睡眠と適度な運動が、アミロイドβの排出を促すとされています。最近の研究で、タンパク質の一種である神経栄養因子が認知機能の維持に深くかかわっていることがわかってきました。
適度な運動は、この神経栄養因子の分泌を活性化するといわれています。ウォーキングなどの有酸素運動と、簡単な筋肉トレーニングなどを取り入れるとよいでしょう」
はっきりと解明しきれていないものの、“地中海食”といわれる食事がアミロイドβの蓄積予防や排出の促進に効果的だとされる論文もある。
「地中海食とは、イタリア、スペイン、ギリシャなど地中海沿岸の国々における伝統的な食事スタイルです。
穀物、野菜、豆類などのバランスのよい食事を基本とし、肉類よりも魚介類、特に青魚を多く摂取します。料理にオリーブオイルを多用することも特徴です」
浦上先生の研究では、特定の香りが認知機能の予防や改善に役立つこともわかった。
「日中はローズマリーカンファーとレモンのブレンド、夜間は真正ラベンダーとスイートオレンジのブレンドの香りを嗅ぐことで、特に認知症の前段階のMCIレベルの患者に認知機能の維持や改善が見られました。
中には外来の患者さんで、10年にわたって良好な状態を維持できている方もいらっしゃいます」
アロマ精油の香りが神経細胞に働きかけることで、リラックス効果をもたらし、睡眠リズムの改善に作用すると考えられている。また、弱った嗅覚そのものを回復させる効果もある。
ただし、使用するアロマ精油は100%天然由来のものが原則。浦上先生はオーガニックのものを推奨している。
化学物質配合の合成香料を長期にわたり吸引すると肝障害などを引き起こすおそれもあるため、自己責任のもとで行う場合は十分な注意が必要だ。