「猿之助さんの賭け事好きは有名です。お休みができると、すぐにラスベガスに出かけてしまう(笑)。何人かでツアーを組むことが多く、右近さんも連れていってもらったことがありました。右近さんはマイペースな性格で、猿之助さんがこまめにお世話を買って出ていたそうですよ。ほかの人はほったらかしだったみたいなんですけどね(笑)」(芸能プロ関係者)

 '15年に行われた『ワンピース』の初演で右近は大阪と博多公演に出演した。今回は大役を任せたいと、強力に右近を推したのは猿之助だった。

猿之助さんは脚本家に“僕が買ってる尾上右近という役者を入れますから。見せ場を作ってくださいよ!”と直談判したそうです。それくらい彼の実力を買ってるんですよ」(前出・舞台関係者)

 猿之助には、“スーパー歌舞伎を古典にしたい”という強い思いがある。今回、再演することになったのも、遠大な計画を進めるための第一歩。

猿之助が右近にかける「想い」とは

「通常公演のほかに若手主体の『麦わらの挑戦』を提案したのは後進を育てたいと思っているからです。

 ただ、周囲からは“なぜ若手に主役をやらせるんだ!”という声も聞こえてきました。猿之助さんは、誰が演じても面白くしなくては古典にはならないという考えを持っています。自分の理想を実現するために、抵抗を押し切ったんです」(前出・梨園関係者)

 『麦わらの挑戦』のチケットは、本公演より安い価格設定になっている。とはいえ、手抜きや甘えは許されない。

「当日までの稽古で“お客さまの前に立てる状態まで持っていく”と意気込んでいました。歌舞伎でいう、型を作る段階ですよね。

 そして“当日を迎えたら舞台は演出家のものではなくてお客さまのものに変わるから、どんどんチャレンジしたほうがいい”ともおっしゃっていました。チャレンジとは、歌舞伎の言葉で言えば“型破り”。型を破ることを条件に、まず作る“型”を教え込んだんです」(前出・舞台関係者)

 師弟関係となったふたりだけが理解する固い約束なのだ。目をかけるからこそ、特別に厳しく接していたらしい。

「猿之助さんは演出も担当しますが、演じながらでは全体の動きを見ることができません。そこで、右近さんにルフィとハンコックを演じさせ、それを見ながら演出を決めていったそうです。

 猿之助さんが演出プランを練るのに役立つだけでなく、右近さんにとっては2倍練習する時間ができることになりますね。猿之助さんは厳しく指導することで右近さんを試し、成長を促していたんだと思います」(前出・芸能プロ関係者)

 思いをしっかりと受け止め、右近は座長の代役を懸命にこなしている。

「そんな座長代理に猿之助さんは、“近くでいつ何時も見守っているので、このチャンスを生かして、尾上右近の歌舞伎を私に見せてください”と言葉をかけたそうです」(前出・梨園関係者)

 猿之助が戻ってくるときには“型破り”な演技を披露することが、いちばんの恩返しになるはずだ。