衆院選で、自民党は憲法改正を公約とし、「教育無償化」「緊急事態条項の創設」「合区の解消」「憲法9条への自衛隊の明記」をそのメニューに上げている。

 前出・飯島教授によれば、

「教育無償化は法律を作って進めればいいだけ。ただ、日本育英会を廃止して、無償の奨学金制度をやめさせた自民党が本気でやるかどうか疑問が残ります」

 また、緊急事態条項とは、災害時に迅速に対応するため内閣の権限を集中・強化、国会議員の任期延長が必要だとして制度を創設、憲法に加えるべきだとして議論されているものだ。

「自然災害に対応する法律は、災害大国の日本にはすでに十分整備されています。議員の任期延長については公職選挙法には特例がありますし、そもそも災害のため、日本全土で選挙ができなかったことは1度もない。

 むしろ“憲法を無効化する法”と呼ばれる緊急事態条項を作ることで、人権の著しい制約や国会の停止、衆院選を無期限延長が可能になるなど弊害のほうが大きい」(飯島教授)

 隣接する都道府県を1つの選挙区とする『合区』の解消も「公職選挙法の改正で対応可能」だという。そして今年5月3日の憲法記念日に、安倍首相が読売新聞の単独インタビューで打ち出したのが「憲法9条に自衛隊を明記」する案だ。

 これに飯島教授は懸念を隠さない。

自衛隊を憲法に明記しても、ただ現状を認めるだけだと自民党の政治家たちは言いますが、それではすまない問題が出てくる。世界じゅうで自衛隊が戦うことを認めることになりますし、防衛費は堂々と積み増しされ、いま以上に福祉予算は削られ国民の負担が増えます。民間人を戦地派遣する徴用も正当化、徴兵制導入の危険性もぬぐえません」

 まるで異なる4つのメニューが並ぶのは、

「国民生活に困ることがあって、だから憲法改正が必要だという姿勢ではなく、とにかく変えることが目的だから」(飯島教授、以下同)

 憲法を改正するには、まず衆参両議院の3分の2以上の賛成で改正案の提案を「発議」し、さらに「国民投票」を行い、過半数の賛成を得る必要がある。

「安倍首相は、最終的には9条を改正して、世界じゅうで武力行使ができる国づくりを目指しています。しかし、いきなり9条そのものを改正するのはハードルが高い。そこで憲法改正は怖くないと思わせるために、『お試し改憲』という形で、いろいろな項目を探しているんだと思います」

 改憲勢力は自民党だけではない。注視が必要だ。