今春には、友香さんと2人の娘、女性とその子どもの5人で旅行をしたことも。
「すっごく楽しくて。これからもっといっぱい出かけようねって話していたのに……」
事故後、2人の娘を心配した女性は連絡をとり、一緒に出かけたという。
「つらいそぶりは一切見せませんでした。大丈夫だよって、明るく振る舞って。本当に強い子たちだなって。ただ、しっかりしているだけに甘えられずにひとりで抱え込まないか心配です。できることはなんでも力になってあげたい」
事故後、嘉久さんが経営する自動車整備工場に1度、田中さんは足を運んだ。シャッターは下りたままだ。
「工場にはよく行っていました。萩山がいなくても中で待っていたりしていたのですが、もう以前のようにシャッターが上がり萩山が現れることはないんだなって……」
そんな悲しい現実を再確認したと田中さんは話し、
「事故の数日前に、友達になって30周年だから今度お祝いをしようって話をしていたのに……。しょっちゅう会っていたので一緒に撮った写真もないんですよ。今は記憶が薄れていくのが怖いです」
法律を変えなければふたりは浮かばれない
長女は、事故後1週間ほどで高校に戻った。
「表面上は元気に振る舞っていますけど……。事故が起こった直後はお父さんとお母さんがいなくなってどうやって生きていけばいいのかなと話していました。少しでもそのつらい気持ちを理解して、支えてあげたいです」(Aくん)
家族仲もよく、夫婦ゲンカも「見たことがない」と文子さん。箱根の温泉旅行や東京ディズニーランドなど、楽しかった日々が、今も鮮明に思い出されるという。
交通事故案件を多数手がける『弁護士法人・響』の徳原聖雨弁護士は、
「今回の事案では、今までの量刑相場から考えると禁固2年でおさまってしまうのではないかと推測します」
と見通し、こう指摘する。
「何度か引き上げられてはいますが、過失運転致死傷の量刑の上限をさらに引き上げてもいいと思うのです。最高で懲役7年だからといって、すべてが7年の判決になるわけではない。事故の状況などに沿い、選択肢の幅を広げてもいいのではないでしょうか」
警察庁によれば「あおり運転」などでの摘発件数は全国で昨年1年間に7625件。その87%、6690件が高速道路で起きているという。
「また同じような事故が起こらないように、法律を変えてほしい。そうでなければふたりが浮かばれないですよ」
文子さんの願いが社会に届くことを祈るばかりだ。