前出・服部理事は、
「(外出を)止めることは不可能です。その衝動を止められないのが認知症であり、病気なのです」
と力ずくではどうにもならないと話し、こう呼びかける。
「専門医を受診して、認知症だと診断を受ければ、介護サービスを利用することができます。夜にヘルパーをお願いすることも可能です。
今回の事件は誰にでも起こりうること。さまざまな支援団体もありますし、認知症カフェでは介護者の気持ちも理解してくれるし認知症の人も癒される。全国の自治体には地域包括支援センターという無料の相談窓口があります。ひとりで抱え込まず、必ず相談してほしい」(服部理事)
そして転居という新たな環境への対応について続ける。
「転居前の場所が近くであれば一緒に時間をつくって行ってあげるとか、知り合いがいるから帰りたいのであれば、電話をさせるとか。少しでも新たな環境に対する不安を取り除いてあげることが大切です」
前出の隣家の女性は、
「(容疑者の)お兄さんも遠方にいるみたいだし、本人は口数も少ないし、誰にも相談できなかったんだろうね。どこか預けるところでもあればよかったんだろうけど……」
と寂しげにポツリ。そして、
「2人乗りはだめだけど、自転車にお母さんを乗せて一緒に買い物に行ったり、“お袋、風呂入れよ”って気遣う声が聞こえたりね。やさしい一面もあったんだよ。暴力はいけないけど、こうなって息子さんもびっくりしたと思うよ」