被告は先回りし後をつけ、人目がないことを確認すると車を降り、背後から近づき後頭部をスラッパーという打撃用の棒で殴りつけた。その後、草むらに引きずり込み、馬乗りになって首を絞め、首の後ろ付近をナイフで刺した。これらの行為に「殺意が認められる」と検察は殺人罪を主張。
一方、弁護側は「暴行現場で刺していない」、草むらに倒れ込んだとき頭を強く打ったことで死亡したと反論する。被告に殺意はなく、「殺人罪は成立しない」と主張している。
首を絞めたのも、殴って気絶させるつもりができずパニックになり、気を失わせるつもりだったと述べ、ナイフで刺したのも生存を確認するためだったという。
地獄であえぎ苦しみ続けることを願う
強姦は未遂に終わったが、恵美さんは死亡。被告は車に積んであったスーツケースに遺体を詰め、遺棄した。
17日、公判2日目。被害者参加制度を使い、恵美さんの父親が意見を述べた。
「被告を許すことはできません。(中略)遺族は極刑を望みます。命をもって償ってください」
母親が事件後の心境をつづった手記も読み上げられた。
《私の一番大事な愛しい一人娘を失って1年余りが過ぎました。未だに心の整理がつかず、写真や笑顔を想いだすたび、涙が溢れ、やるせない気持ちです。娘の笑顔がすべてでした。母の喜びでした。楽しい人生が送れるようにと願っていました。
その願いも叶いません。(中略、被告が)地獄であえぎ苦しみ続けることを心から願います。私の心は地獄の中で生きています》
代理人が手記を読み上げている間、母親はハンカチで目頭を押さえ、ずっと被告を睨みつけていたが、被告が表情を変えることはなかった。
「これまで被告からは反省も謝罪も一切ありません。罪の意識が乏しい印象です。罪状認否にも事前に用意した文章を読み上げて答えており、内心はうかがえません」
と地方紙の記者は訴え、
「24日に開かれる審議の最後に被告が供述する機会があります。そこで何をしゃべるかが重要。このまま黙秘を続けられたら、何も明らかにされず裁判は終わります。それじゃあ、遺族は耐えられない」
と、顔をゆがめた。
「この1年、空は天気でも晴れているって感じたことはありません」(前出・當山さん)
判決は12月1日。被告は沈黙を破るのだろうか。