その言葉の裏には、愛弟子への気遣いがあった。ふだんの練習からオーバーワークぎみな羽生のことを心配しての発言だったのだ。
難易度の高いジャンプは負担が大きい
「ジャンプの直前に難易度の高いステップなどを取り入れているので、それなりの練習では彼自身が満足できないんです。それに加えて、昨シーズンは4回転ループ、今シーズンは4回転ルッツというように新たなジャンプも習得してきている。
一見、華麗に見えますが、その努力は人一倍のもの。身体への負担が大きいため、もともとオーサーコーチは4回転ルッツを跳ぶことに反対だったんです」(同・スケート連盟関係者)
昨年の4月にも、左足リスフラン関節靭帯をケガしている羽生。これもハードワークや過密な試合をこなしたからだと言われていた。
「オーサーコーチは今回、羽生選手がケガをしたことで、少しでも身体を休ませることができると安堵したのです。練習量をいつもより落としたり、ケガのリスクの高いジャンプを削った構成に落ち着かせることができるのでは、と思ったのでしょう」(同・スケート連盟関係者)
難易度の高い4回転ジャンプを抜きにしても、羽生の滑りは他の選手と比べて群を抜いていることは明白だ。
「9月にカナダで行われたオータムクラシックのショートプログラムでは、4回転サルコーこそ入っているものの、ルッツやループという難易度の高いジャンプを跳ばなくても世界歴代最高得点を叩き出しました。
これは、昨シーズン以前よりもスケーティングスキルが高い証拠。負担が大きい難易度の高いジャンプを組み入れなくても、十分に勝てるポジションに彼はいるのです」(前出・スポーツ紙記者)
同様に、アメリカのジェイソン・ブラウンやウズベキスタンのミーシャ・ジーらも、4回転を無理にプログラムへ組み入れなくても、優れたスケーティングスキルで安定して高得点を保っている。
「あえて得意なジャンプのみで構成し、ステップやスピンなどのジャンプ以外の要素でしっかり加点することも戦い方のひとつなのですが……」(同・スポーツ紙記者)