順天堂大学OB稲田翔威さん、箱根&ガルパンで就職決定
’14年の第90回大会。駅伝ファン以上に(?)、アニメファンが熱い声援を送った選手がいたのをご存じだろうか? 当時、順天堂大2年の稲田翔威さん(現・コトブキヤ陸上部)だ。
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「僕は『ガールズ&パンツァー』(以下ガルパン)というアニメが大好きで。劇場版は30回見ました。簡単にいうと、女子高生が戦車を使った競技で全国制覇を目指す物語なんですが、キャラクターの心情や成長など、スポーツ選手だと共感できる部分がたくさんあって……」
のっけから“ガルパン愛”が止まらない。発破をかけると、いい走りをすると見抜いていた長門俊介コーチ(現監督)は、大会前にこう告げたそうだ。
「“1人抜かれるごとに、フィギュア1個没収”と。たぶん、冗談半分だったんですけど、新聞やSNSでどんどん広まって。シャレにならなくなって(笑)」
結果は、3区で区間15位。2人に抜かれた。“嫁が2個没収されてしまう”と嘆いたツイッターは、瞬く間に拡散。すると、フィギュアを製造・販売するコトブキヤが“弊社から補給いたします”と、まさかのコメント。
「びっくりしたし、感激しました。でも、甘えるわけにはいかない。実際、没収はありませんでしたが、“来年、2人抜いて取り戻す”と誓い、自らマネージャーにフィギュアを預けました」
以後、予選会を含め、稲田さんが箱根を走る際には、必ずコトブキヤがキャラクターの横断幕を作って応援してくれた。そして、翌年は4区で区間6位。見事2人を抜いた。
「フィギュアはすごいモチベーションでした。“絶対抜いてやる!”と思いましたね(笑)」
4年の最後の箱根は7区で区間5位。チームを9位から5位に押し上げた。卒業後は、陸上自衛隊に進むか、実業団で走るかで悩んだ。そんな中、長門コーチは陸上部を持たないコトブキヤで“宣伝ランナー”として走ることを発案する。
「せっかくの縁。不安はありましたが、挑戦しようと思いました」
稲田さんと長門コーチの熱意に応え、コトブキヤは’16年に陸上部を設立。現在、稲田さんは社名の入ったユニフォームで試合に出ている。
しかし、“宣伝ランナー”は、実業団選手とは働き方が異なる。
「9時半から4時半まで、店舗勤務。『ガルパン』を含めたフィギュアなどの売り場が担当です。レジ打ち、店内巡回、品出し、在庫管理……などを行っています。その後に軽めの練習。休日は、母校などで練習しています」
今夏は『ひぬま夏海マラソン』で優勝。自らの提案で行った優勝セール&撮影会は大盛況だった。そんな稲田さんの夢とは?
「コトブキヤで『ニューイヤー駅伝』に出ることです。長距離選手って、けっこうアニメ好きが多いんです。まだ陸上部は僕ひとりですけど、少しずつ結果を残して、いずれはメンバーを集めて出たいです!」
〈profile〉
コトブキヤ陸上部所属の宣伝ランナー。’94年2月23日生まれ。茨城県出身。順天堂大で箱根駅伝に3度出場(2~4年)。アニメ『ガールズ&パンツァー』が大好き。「好きなキャラクターは西住みほとケイ」。