墜落事故経験者の話
沖縄では、米軍による事故・事件が歴史的に繰り返されてきた。アメリカによる統治下だった1959年には、小学校へ米軍のジェット機が墜落、児童11名を含む17名の犠牲者を出した。
「オスプレイが一昨年に墜落したり、去年も不時着・炎上する事故を起こしたりして、そして今回の落下事故。いつまた宮森小と同じような事故が起きても不思議じゃない」
そう話すのはNPO法人『石川・宮森630会』の伊波洋正さん(65)。石川市(現・うるま市)で起きた宮森小学校米軍機墜落事故の体験者だ。当時1年生だった伊波さんは事故から58年がたつ今も記憶が頭から離れないという。
「ミルク給食を飲み終えた朝10時40分ごろ、西側からドン! と、大地に大きなものがぶつかるような音がした。すると、西側にいた子どもたちが悲鳴をあげ飛び出してきたんです」(伊波さん、以下同)
担任から、学校に飛行機が落ちたと告げられた伊波さんは下校中、手押し車を押す女性を目にする。荷台に乗っていた男の子は全身が火であぶられたような色に変わり、目も開けられなかった。
事故原因について、米軍はエンジンのトラブルと説明してきたが'99 年、整備不良だったことが地元メディアの報道で明らかに。
「さらに事故の前年、クラスAの大事故を168件も起こしていたことがわかった。事故後、米軍からの謝罪は1度もありません。事故があるたびに米軍は原因究明や安全管理の徹底、綱紀粛正を強調しますが、言うだけで何も効果がない」
米軍が起こす事故について「あってはならないこと」と政府は言う。では、なぜ沖縄で繰り返されるのか。
「他人事と考えているようにしか思えません」
ひとたび事故が起きたとき、真相究明の壁になるのが『日米地位協定』だ。軍事ジャーナリストの前田哲男さんが解説する。
「例えば、パイロットのミスで事故が起きて死傷者が出た場合でも、米軍が公務中であると言えば、日本側は捜査権も裁判権も持てない。それが日米地位協定の基本的な原則なんです」
普天間第二小への窓落下について、米軍はパイロットの操作ミスが原因で、機体には問題がないとしている。日本がほかの機体はどうなのか調べようとしても、捜査できないというわけだ。
「ドイツやイタリアでは、事故に直結しやすい訓練を国内では行わないよう地位協定を米側にあらためさせています。日本もそうできないのは、政府がアメリカに要求しないからです」
そもそも米軍機が学校の上を飛ばないよう日米で「合意」している。
「日本側の説明では、普天間飛行場の周辺にある学校の空域は飛ばない条件つきで米軍機の飛行を認めているという。しかし沖縄防衛局が測定したら、実際は学校の上空を飛んでいる。
政府が本当に学校上空を飛行しないことを条件に合意したのであれば、明確な違反。住民の命と暮らしを守ることが政府の最大の役割です。子どもたちが日々、危険にさらされていることを放置したまま抑止力だ、日米安保だと言っても、まったく説得力がありません」