私が思うタモリセンスとは……、

『笑っていいとも!』(フジテレビ系)の頃、タモリさんは、横に読むべきフリップを、縦に読んでボケたり、素人企画で、お母さんと幼児が登場し、「お名前は?」とマイクを向けた時、幼児がタジタジしていると、声色を変え「ジョセフィーナです」とかタモリさんが勝手に答えてたりする。

 そんな一瞬のユーモアで周りを和ませるところだったり、

 知識を自慢げに語るのではなく、親戚の話でもするように語るところだったり、

 地層を、友達の話をするように語り、

 美味しいウィスキーを「この娘はね、鯖江市のメガネ屋の生まれで〜」と昔付き合った女性のように語る。

 いつも予定調和を崩し、今、この時点の空気を調和させるところだ。それは清浄でも浄化ではなく調和。

 世間もメディアもクレーム社会になっている昨今、調和というユーモアの大切さを感じる。

 私が考えるユーモアの定義は、相手の視点の転換を促す機転。硬直した状況を打ち破る勇気ある優しさ。それらを言葉にする知性。

 適当にやることは、相手を許し、優しくなれることなのだ。

「明日も見てくれるかな?」「いいとも」

 作り手と視聴者のコール・アンド・レスポンスを胸におきながら、今年も番組をたくさん届けたいと思う。

<プロフィール>
樋口卓治(ひぐち・たくじ)
古舘プロジェクト所属。『中居正広の金曜のスマイルたちへ』『ぴったんこカン・カン』『Qさま!!』『ぶっちゃけ寺』『池上彰のニュースそうだったのか!!』などのバラエティー番組を手がける。また小説『ボクの妻と結婚してください。』を上梓し、2016年に織田裕二主演で映画化された。最新刊は『ファミリーラブストーリー』(講談社文庫)。