「どんなときにも過去を振り返るな」とはいわない。だが、そのような過去を振り返るような集まりの時であっても、なるべく「これからの話」をしようではないか。
私は78歳になるが、以前にも増して、若い人たちと時間を過ごすようにしている。彼らは「お金持ち」ではないが、「情報持ち」だ。会っていて面白いし、刺激的だ。若い人たちといるほうが、気持ちも前向きに明るく楽しくなってくる。
若い友人たちは、いつも、「新しいことを始めよう」「なにかにチャレンジしよう」という前向きな話をする。自然と私も未来に対して思いを馳せるようになる。
フランスでは、老人と若者のシェアハウスがあって、老人が家賃負担をする代わりに、若者が老人の話相手をするそうだ。こういう共同生活は理想的といえるだろう。日本でも、このような老若共同のシェアハウスを、高齢者が積極的につくったらどうだろうか。そうすれば、もう少しまっとうな年寄りが増えてくるように思う。
意図的に「友達の切り替え」をやろう
周囲が若者に変われば、50歳以上の人たちも、新しい情報を知ろう、学ぼうという意欲、よりいっそうの「生き甲斐」も湧いてくるはずだ。新しい活動への意欲も自然に出てくる。ときには、若い人たちが自分を担いでくれたりすることもあり、何歳になっても新しい経験を積んでいける。
懐古主義の高齢者同士が一緒にいても、なにも始まらない。旧友との付き合いは本当に大切な人だけに絞って、その分だけ若者と友達になったほうがいい。その分、新しい世界が広がる。人生を、いつまでも豊かに生きられるようになる。
「友達の切り替え」は、意図的に行わなければならない。この切り替えこそが、新しいことに興味を持ってこれからを楽しんでいくための「人生の転轍機(てんてつき)」(路線変更装置)なのである。
江口 克彦(えぐち かつひこ)故・松下幸之助側近 1940年2月1日、名古屋生まれ。前参議院議員(1期)。愛知県立瑞陵高等学校を経て慶應義塾大学法学部政治学科卒。松下電器産業(現パナソニック)入社後、1967年・PHP総合研究所へ異動。秘書室長、取締役、常務取締役を経て1972年専務取締役、1994年副社長、2004年社長に就任。2009年退任。その後、執筆・講演を中心に活動していたが、「みんなの党」の渡辺喜美代表からの要請に応え、「地域主権型道州制」の政策を掲げ、2010年7月の参議院議員選挙に出馬、当選。松下幸之助のもとで23年側近として過ごし、松下幸之助に関する多数の著作がある。松下幸之助哲学の継承者、伝承者と評されている。それゆえ、松下幸之助経営に関する講演依頼も多い。また、松下幸之助の主張した「廃県置州論」を発展させ「地域主権型道州制」を提唱、国会では超党派の『道州制懇話会』の共同代表を務めた。各地で「地域主権型道州制」の講演、啓蒙を行っている。公式サイトhttp://www.eguchioffice.com/