初の著書『「引き出し1つ」から始まる!人生を変える片づけ』が6万部を突破。NHKあさイチの「スーパー主婦」でおなじみ、整理収納アドバイザーの井田典子さんに「夏の収納」について話を聞いた。
「暑いから片づけなんてしたくない、やる気がないという声はよく聞きます。でも、この時期は一年のうちでいちばん、部屋のなかに出ているモノが少ないから、片づけやすいはずなんです」と井田さん。
──たしかに、どこの家でも羽毛布団やかさばる冬物のコートや洋服、暖房器具は奥にしまってあるはず。冬モノを出すとき、一気に部屋が「ふさがっていく」感じはします。
「今の時期に、モノがあふれているようでは、冬になってかさばるモノが出てきたときに、さらにもっとモノがあふかえりますよ。冬になったときに、今度は夏の薄物をしまいますが、そこで空間に余裕がうまれます。夏物をいかに増やさないか。整理して暮らすか。スッキリと収納に余裕のある家で暮らすためには、今の時期の過ごし方が大切なんです」。
──うーん。でも今は夏ものバーゲンの時期。買わずにいられない衝動が…。
「枠を意識した生活をしてみましょう。そうすると欲望の整理もできます。たとえば本が好きならば、ストックは棚3つ分におさまるしか持たないとか。洋服もそうです。私の場合、1アイテムにつき5つだけ。Tシャツなら5枚、セーターなら5枚。なぜ、5という数字なのかと言うと、覚えていられるから。気に入ったものが5つあるとわかっているならば、バーゲンで無駄なお金と時間と消費しなくなりますよ。増えていくものに従うのではなく、枠を決めてはめていくという感覚です。
たとえば野球選手も100人をベンチ入りさせるのはムリです。20人にしぼれば、監督だって管理しやすくなる。モノでいうなら、多すぎるものは人にゆずったり売ったりすることで、そのモノ自体もさらに有用になるわけです。本当に自分が管理できるもの(レギュラー)で生活していくことを、意識したいものです」
──そうか、自分は「監督」! でもサボり気味の監督だったらどうしましょう。部屋がごちゃつきすぎて、どこから手をつけていいのか正直わからないというのが本音…。
「自分が“なにをしているときが一番幸せなのか”を考えてみましょう。
お風呂に入っている時ならバスルームから。料理が好きならキッチンから。本を読むのが好きなら、本棚一つから始めるんです。自分が好きなことをしている場所を、もっと快適にしたいと思えば重い腰も、少しはあがりませんか。一か所できたら写真にとって、自分の励みにする。ひとつ成功したら、弾みがついてほかの場所にも拡大していけますよ」
──ちいさな場所の成功体験が大切なんですね。本のなかでも、井田さんご自身も「引き出し一つから」人生を変えたというエピソードがのっています。
「子どもが学校をサボりがちになり、夜になっても家に帰らない日が続きました。どこでなにをやっているのかわからない、心配だし、自分が一生懸命やってきたはずの子育てがどうしてこうなっちゃったんだろうって。おさまらない気持ちが、引き出しとか棚とか、部屋のなかを少しずつ片づけることで、落ち着いていったんです。
そのときに思ったんですね。子どもという存在とは違い、家事や時間や家計は自分でコントロールができるものなんだって。とくに片づけは、がんばったぶんだけ、“快適”という結果が必ずついてきます。そこに気づいたときに、ふっと心がラクになる気がしました。息子への言葉がけも変わっていきましたね。いまではとてもやさしい子になってくれて。海外で夢をかなえようとがんばっています」
──人間相手だと自分の思いのままにはならないですもんね。ストレスを感じたときに、まずはバッグの中身からでも整理してみます!
「もっと小さなところからでもいいと思いますよ。バッグに入っているポーチの中身からとか、スマホの画面のアプリを整理するとかからで!笑」
<著書情報>
『「引き出し1つ」から始まる! 人生を救う 片づけ』
「片づけと収納」「家事」「心地よい暮らし」の3つの方面から、家事の考えをあますことなく語った55編のエッセイ。本体1200円+税/主婦と生活社刊。
<著者プロフィール>
整理収納アドバイザー。相模友の会(婦人之友読者の会)所属。NHK総合テレビの情報番組『あさイチ』等で“片づけの達人”、“スーパー主婦”として活躍。主婦ならではの実践的な整理・収納術が好評で全国各地で講演会を行う。