同じアパートに住む男性は、
「子どもが泣いていたり、ドドドドドと走り回るような音は聞こえていました。ただ、ギャーとか異常な泣き方をするような感じはなかったです。それ以外の声や音はまったく聞こえなかったですね」
と話す。そして、
「今年の春ぐらいだったか“いつもうるさくてすみません”と言われ“大丈夫ですよ”と答えたのを覚えています。おとなしそうな女性です」
一緒に住む男性の存在
虐待が発覚した後も、長男とアパートで生活をしていたのか。前出の児相所長は、
「現在は2人とも児童相談所の保護下にある。長女は発覚後に即日保護しましたが、長男についてはお答えできない」
また、近隣の70代男性からはこんな話が聞けた。
「一緒に住んでいた男性が父親だとばかり思っていた。上久保容疑者と一緒に車で帰って来ることもありました。言われてみれば昨年春には、おなかが大きかったのは覚えていますが、夫婦と子ども1人の3人家族と思っていました。男性はいまもアパートに住んでいますよ」
その男性(※草加署は8月28日、同居する元夫・上久保雄太容疑者=36歳=を保護責任者遺棄致傷容疑で逮捕。容疑を否認している)が一緒に住んでいたのか、どのような関係性かは定かではないが、自らの子に手をあげた上久保容疑者をどう見ていたのだろうか。
被害女児について前出・捜査関係者は、
「生まれつきの発育不良があり、0歳4か月程度の体重であった。未熟児の状態で生まれてきたとのことで、通常の児童より発育が遅かった。ハイハイもできなかった」
母親がより手をかけなければならないはずの子どもを逆に放置し、見放した。
その理由は、
「子育てがうまくいかず、かわいいと思えなかった、と話し、容疑を認めています」(前出・捜査関係者)
社会心理学者である新潟青陵大学大学院の碓井真史教授は、虐待を受けやすいケースとして「手のかかる子」を挙げる。
「手のかからない子は愛着が湧きやすく、かわいいと思う。一方で、手のかかる子は自分の思いどおりには育たない。未熟児として生まれ、シングルマザーとして孤独な子育てを強いられた末、この子が私の幸せを奪っていると追いつめられていったのかもしれない。
子どもを(トイレに)閉じ込めるというのは、自分が虐待しているという現実を見ないようにしていたのでは」
長女はやがて成長し、自らの人生を歩みだす。その歩みの中で、足の指の欠落した理由を知ったとき、彼女は何を思うだろうか。