ラジオは災害時に何を救うのか
結局、わが家は地震発生から約45時間ほどで電気が復旧し、少しずつ日常生活に戻ることになりました。家の照明が灯り、そしてテレビがついたときは、嬉しさのあまり思わず涙がこぼれてしまったことを、今でもすごく覚えています。
それと同時に、家の照明が灯り、そしてテレビがつくことは、何も当たり前のことじゃないのだとすごく痛感しました。
電気が失われれば、当然その瞬間からテレビは見られなくなります。そしてスマホも携帯基地局の電源が切れてしまったら、もしくはそのものの電池がなくなってしまったら、ニュースもSNSも、一瞬にして見ることができなくなります。
今回、短い間ではありますが強い地震とその後の大規模停電に遭遇し、その中で強く感じたのは、「災害時のラジオは人の心を救う存在である」という思いです。
電気が止まっても、食べ物や飲み物があれば、とりあえず生命を守ることはできます。しかし人は弱いもので、それだけでは心を保つことはできません。
そして心のショックが長引けば長引くほど、その後、再び自分を支えられるようになるまでには、かなり長い時間がかかることになります。
だからこそ「災害時にはラジオ」なのだと思います。
ライフラインの途絶えた中で伝えられる貴重な情報はもちろん、人の声や音楽で他者の心を思いやり、慰め、励ますためにこそ、ラジオは今日も存在し続けているはずなのです。
わが家はこの地震の後、自戒も込めてポータブルラジオを購入し、radikoと併用して使用するようになりました。
9月の北海道にあったのは、テレビやネットの影に隠れがちながらも、ここぞという時に一番頼りになった“縁の下のエンターテイメント”の力。
そして自らも被災者でありながら放送を続けてくれていた、その偉大な存在への、大きな感謝です。
乗田綾子(のりた・あやこ)◎フリーライター。1983年生まれ。神奈川県横浜市出身、15歳から北海道に移住。筆名・小娘で、2012年にブログ『小娘のつれづれ』をスタートし、アイドルや音楽を中心に執筆。現在はフリーライターとして著書『SMAPと、とあるファンの物語』(双葉社)を出版している他、雑誌『月刊エンタメ』『EX大衆』『CDジャーナル』などでも執筆。Twitter/ @drifter_2181