鰤谷という役が抱える心の闇が僕を強く引きつける。なぜ彼女は高校生になって変貌したのか。自分から離れていくかつての友だちをどんな思いで見ていたのか。「ひさしぶりだね、名前呼んでくれたの」と喜び、「なんでアタシは仲間に入れないんだよぉ」と怒り、「いっぱい遊んだじゃん」と悲しむ。

 そんな乱気流のように渦巻く内面を持ちながら、見た目も言動もゲスの極みギャル。演じるのは、さぞや難しかったに違いない

 この映画の中で、鰤谷は扱いとしては完全な脇役である。しかしながら、彼女なしでは物語は成立しない。高校時代のエピソードの多くに、鰤谷が絡んでいる。SUNNYのメンバーが疎遠になってしまう出来事、この映画のクライマックスの一つだが、それも彼女がきっかけだ。

 ここまで重要な役どころでありながら、それを演じる小野さんの名前は表には出てこない。妙な言い方かもしれないが、僕はこれぞ「真の助演女優」だと思った。華やかな主演たちを助け、そして物語を助けるそんな存在

 そこで今回、小野花梨さんには『極私的助演女優賞』を勝手に差し上げ、勝手に表彰します。

 この原稿を書きながら、妄想したことがある。鰤谷目線で『もう1つのSUNNY』を作ったらどうなるだろうか。それはおそらく彼女と芹香が親しかった中学時代から始まるだろう。そして、とても切なく、最終的にはやり場のない気持ちに襲われるだろう。しかし、それもまた、強い気持ち・強い愛の物語となるはずだ。

 

<プロフィール>
山名宏和(やまな・ひろかず)
古舘プロジェクト所属。『行列のできる法律相談所』『ダウンタウンDX』といったバラエティー番組から、『ガイアの夜明け』『未来世紀ジパング』といった経済番組まで、よく言えば幅広く、よく言わなければ節操なく、放送作家として活動中。