“君”でなく“俺”
「あんまりね、人の気持ちがわからないんですよ。最近は少しは人に共感できるようになりましたけど。病院には行ってないのでわかりませんが、何か病名があるかもしれませんね。
どこにいても自分はそこに属している感じはしなくて、だから僕の歌もほとんど“君”でなく“俺”。人にはあまり語りかけてないことが多い。
察するってことができない。僕はずーっと言いたいことを言うタイプだったから、人が黙っている時って何も考えていないと思っていたんですよ。でもそうじゃないんだということに随分大人になってから気づいた(笑)。
良く言えば裏表ないけど、悪く言えば一言多いというか。そうこうしていると次第に人と付き合いたくなくなってくる。
でもジャマイカには僕みたいな人間がいっぱいいて、ホッとしました。日本では謙遜が美徳ですけど、ジャマイカ人はずっと奴隷だった歴史があるからか卑屈になるのが絶対いやで反抗的なんですよ。
例えば、ジャマイカ人はアーティストネームを『ジェネラル(将軍)なんとか』だったり、自分自身を茶化してギャグにしたりしないんです。僕自身も自虐の文化ってあんまり好きじゃなくてね、するのも見るのも。
幼稚園ぐらいの時から周りと違うなという自覚はあって、自分は何をするのかなってところでレゲエに出会って、すぐジャマイカ行っていろんな人と出会って。アメリカでもヨーロッパでもない、小さな島でできた文化が世界に広まっていった、それがレゲエ。そこには自虐も卑屈もなく田舎でも貧乏でも胸張ってるのがかっこよいと思った」
そして彼は自身の波乱万丈な人生を振り返りこう語る。
「まぁ“塞翁が馬”です。何が良いか悪いかわからんねってことですかね(笑)。
ケガも病気もしんどいけど、みんなに追いつくためにぐっと頑張れることもある。生命力は強めなのかもしれないですけど(笑)。ただ僕は運良く頑張ることができたけど、それは決定的な悲劇にはならなかったから。それでも得るものがあったというか。
でもどうにもならない人もいると思うんですよ。誰しも限界を超えたら耐えられるもんではないと思うんです。そういう人を減らせないものかっていつも考えてます」