「今回の斎藤さんは、事務所の電話から転送されて携帯電話に着信があった形ですが、自宅の固定電話にかかってくるケースが9割以上です。オレオレ詐欺の犯人側がターゲットにしているのが、昼間に在宅しており、固定電話に出てしまう人。読者にぜひお伝えしたいのは、電話にしっかりと“鍵”をかけていただきたい”ということです」
そう警鐘を鳴らすのは、警視庁犯罪抑止対策本部の山上嘉人管理官。斎藤の場合は、ケータイに非通知での着信が事件のはじまりだった。
「犯人からの電話に出ないための対策として、携帯電話でも固定電話でも、非通知の電話や知らない番号からの着信には出ないようにしてください。
警視庁では、オレオレ詐欺対策を進めておりますが、問題点として、相手側の番号を確認できる『ナンバーディスプレー機能』のある電話機を使っていない人が多いということもあります。相手側の番号がわかる状態でないと防犯対策に活かせません」(同・山上管理官)
都内の一部自治体などでは、オレオレ詐欺対策として『自動通話録音機』を無償で貸し出しもしている。これを電話機につけると、着信音が鳴る前に自動的に“詐欺対策のために自動録音する”という旨のメッセージが流れる仕組みになっていて、証拠が残ってしまうことを嫌がる犯人側は通話をあきらめ、被害を未然に防止できる。
「家に鍵をかけることと同じように、電話にも鍵をかけるという認識を持ってください。それ以外では留守番電話設定にして、非通知や知らない番号には出ない。本当に用事がある場合は、留守番電話にメッセージを残すはずですから、必要がある着信のみ折り返すという形にしていただきたいです」(同・山上管理官)
昨年の特殊詐欺の件数は、首都圏では増加しているが、全国的には減少傾向にある。しかし、前出の多田氏は、
「減少といっても、被害額的には1日1億円が出ている。減っている地域は集中的に狙われていないだけなので、今後増える可能性もある。地方を狙う新たな手口が出てくることは十二分にあります」
愛知県を中心に、警察署での講演などオレオレ詐欺撃退アドバイザーとして活動する藤本和浩氏は、地方での被害について次のように続ける。