以前から商品との距離が近い女性モニターからは「洗濯=女性のイメージでしたがイケメン俳優5人が洗濯をアピールしていて斬新。まったく新しい商品なんだろうとわかります」「若い男の人が洗剤について語るなんて、今の時代だなぁ〜と感じる」といったコメントが寄せられ、おなじみのブランドがリニューアルしたことに加え、商品だけなく“時代”も変わったのだと読み取るモニターもいた。

 男性からも「うちの家もドラム式なので欲しいと思いました」「使ってみたい」「CMが流れるとつい見てしまう。どんな商品か気になる」と普段意識しないであろうカテゴリーの商品に対して“自分ごと化”した感想が寄せられた。

「アタックZERO」が示した新しい家事の描き方

 女性の社会進出や共働き世帯の増加により、近年、家庭内での家事分担が多く話題に上っている。それに伴い家事・育児は女性の仕事だと感じさせる表現は拒絶され、企業姿勢を疑問視されることも少なくない。

 そうした中、テレビCMでも男性が当然のように家事をする描写が多く見られるようになったが、世間からの反応に対して意識や配慮をしすぎるあまり現実味がなかったり、不自然な印象を受けるものもある。

 おそらくそれは家庭内のタスクを“負担”と捉えたまま、それを家族の誰が負うのかという切り口でしか考えていなかったからだ。

 アタックZEROのCMが年齢や性別を超えて支持された最大の勝因は、「洗濯」という家事タスクを愛すべき趣味であり“娯楽”としてポジティブに変換したことだろう。「洗濯をしたくなった」「純粋に洗濯をしたくなるCM」という感想が書かれているのが、これまで負担と考えられていたタスクが楽しいものに見えている何よりの証拠だ。

 超成熟市場となり消費者の顕在的なニーズはほぼ満たされている今、商品特長で差別化をはかることは難しい。洗剤に関していえばブランドごとの「汚れ落ち」の差を識別できる消費者はどれだけいるだろうか。多少の好みはあれど、競合メーカーの商品に替えても日常生活に支障を来すことにはならないはずだ。

 そうした環境でブランドが生き残るためには、その商品を手にしたときに消費者がどれだけワクワクできるか、「好き」と思えるかが大切だ。意思を持って選択・消費され、“道具”ではなく“愛用品”と思ってもらえるか。機能だけでなく情緒的な付加価値の重要性は今後ますます高まりそうだ。