先月26日の国会閉会と同時に事実上の選挙戦がスタート。誰に入れても変わらないという声が聞こえてくるけれど、たとえ政治に興味がなくても無関係ではいられないのが現実。そのツケは庶民にこそ降りかかるのだから。まずは、安倍政権の政治と暮らしへの影響を検証していこう。
参院選の争点は“戦後最悪”の安倍政権
7月21日に投開票の参議院選挙が間近に迫っている。2012年12月に安倍晋三氏が内閣総理大臣に返り咲いて以来、3回目の参院選だ。
選挙直前になって、「年金を支給されても老後は2000万円が必要」という金融審議会の報告書をめぐり批判が殺到、終盤国会は紛糾した。
テレビの情報番組でコメンテーターも務めているジャーナリスト・青木理さんは「参院選は、政権の中間評価。争点は安倍政権です」と前置きをしたうえで、こう批判する。
「いまの安倍政権は、戦後最悪の政権だと僕は思う。年金制度ひとつをとってみても、いずれこうなることはわかっていたのに、問題を直視せずにやり過ごそうとしている。無責任です」
年金制度は経済成長を前提にしている。成長が見込めなくなれば当然行き詰まる。
「戦後は右肩上がりの時代が長く続きましたが、バブル経済をピークに、その時代が終わりました。本来は産業構造などの抜本的な改革が必要だったのに、できませんでした。バブル期には、世界の時価総額ランキングのトップ10に日本企業の姿がいくつもありましたが、いまは見る影もない。
アベノミクスなどと言いますが、現実には金融緩和をしただけで、財政や社会保障制度の改革もできていません。そのさわりが年金問題です。このままいけば、貧困で生活できない高齢者が増えていきます。少子化対策もできていませんから、年金制度で老後を維持できず、生活保護世帯が増大しかねません」
公文書の扱いやデータの改竄も問題になった。
「森友学園問題では政権に不利になるからといって、財務省が決裁文書を改竄しました。厚生労働省も、毎月勤労統計のデータがずさんで、働き方改革の法案を通したいから都合のいいデータを集めたりもしました。
防衛省も、(新型ミサイル防衛システムの)イージス・アショアの配備にあたり、調査データの誤りが発覚しましたが、グーグルアースで測定していたことがわかっています。専門家集団として政治に客観的データを示すのが官僚の役目なのに、一強政権の下で官僚組織が腐り始めています。これは極めて深刻な事態です」
こうして問題が噴出しながらも、安倍総理の在職期間は伊藤博文を抜いて歴代3位。参院選を乗り切り、政権を維持できれば、11月には憲政史上最長になる可能性もある。
「いまは選挙で政権にお灸をすえるような流れにはありません。皮肉を込めて言えば、安倍氏の唯一のすごさは運がいいところ。1回目の政権は失敗しましたが、戦後初の本格的政権交代となった民主党政権が自滅し、野党は相変わらずバラバラの状態。自民党内に対抗する派閥もなくなった。周囲が埋没しているので結果的に一強に見えるのです」