最初は軟弱地盤の存在すら認めずごまかそうとしていた政府だが、今年1月にはついに安倍首相も衆院本会議で認める発言をし、3月には、地盤改良を検討した報告書を含む1万ページにも及ぶ資料を国会に提出するに至った。
政府の計画によれば、軟弱地盤を改良するために、なんと7万7000本もの「砂杭(すなぐい)」を打ち込む工法が用いられるという。
「大浦湾の埋め立て用の土砂は大量に必要で、奄美大島や北九州など西日本各地からの搬出計画が立てられています。しかし、軟弱地盤が発覚したいまは、事業者の防衛局側では、地盤改良のために打ち込む砂杭のための大量の海砂をどこから調達してくるか、ということが課題になっているはずです。逆に私たちにとっては、海砂を調達させないための監視・対策が課題ということになります」
工事をやめて困るのは誰?
いずれにしても、工期も総予算も未確定の事業など民間企業ではありえない話だ。そんな事業を、政府は沖縄を含む全国の納税者の血税を湯水のように注ぎ込み、見切り発車させている格好だ。安倍政権の頭にあるのは、受注業者への利益配分だけだと言われてもしかたのない状況である。
そう知らされてなお国のやることだからしかたがない、と思う人がどれぐらいいるだろう。先の参院選でも税金の使い道が争点になったが、消費税率10%へのアップを許しつつ、そのうえ約2・6兆円の血税を投入してなお完成のめどさえ立たぬ異常な公共工事をも、私たちは許すのか。参考までに書き添えれば、政府は'17年、約2兆円で幼児・高等教育の無償化や待機児童の解消を謳(うた)うプランを立てたが、完全実施には至っていない。
無理筋の辺野古新基地建設のゴリ押し工事をやめて困るのは、いったい誰か。全国のひとりひとりが真剣に考える時期に来ている。
(取材・文/渡瀬夏彦)
渡瀬夏彦 ◎沖縄移住14年目のノンフィクションライター。基地問題からスポーツ、芸術芸能まで多岐にわたり取材。『銀の夢』で講談社ノンフィクション賞を受賞。秋に『沖縄が日本を倒す日』を緊急出版予定