「お客さんに逆に失礼よ」
股旅演歌や『きよしのズンドコ節』などのヒット曲は言わずもがな。5月にはツイッターのトレンドで世界4位になるほど話題をさらった『限界突破×サバイバー』やGReeeeNが楽曲提供をした『碧し』など、演歌の枠にはおさまらない姿もたくさん披露。
「昔から友達には“オリジナルでポップスとか歌わないの?”と聞かれてて。“そんなに簡単じゃないよ”と答えてました。あまりに演歌歌手のイメージが強すぎるから、自分が演歌以外の曲を出しても……と思っていました。世の中に受け入れてもらえるかどうか、そればかりを恐れてきた気がします。それに、演歌歌手という枠からはみ出したら批判されるような気もしていました」
しかし、ある関係者からもらったアドバイスが心に大きく響いたという。
「“もう40歳を過ぎて、20年近くもキャリアを積んでいるんだから、あなたが歌いたくてしかたがない、楽しくてしかたがないものを歌っていかないと、お客さんに逆に失礼よ”と。
びっくりしました。そして、本当に気持ちが入れば音楽のジャンルは関係なかったことに気づいたんです」
思い込みからの覚醒。今や、コンサートツアーでもロックを歌う。年配客は目が点になるというが、
「でも最初だけ。最後はもうノリノリ(笑)。考えてみれば、60代や70代の方もロック世代じゃないですか。年を重ねていくと、気恥ずかしいと思っちゃうんでしょうね。でも、一緒にはじけてもらえるとうれしいし、絶対そのほうが楽しいと思うんです」
もちろん、これからもきよしくんの主軸が演歌であることは変わらない。
「いい意味で、演歌歌手の枠を取り払えるような挑戦をしていきたい。“氷川きよし”でないとできないことをやっていきたい。自分の身体と心を通して、自分の心の中から出てきた言葉をメロディーに乗せてしっかり歌っていける曲を、自分の人生を、歌いたいと思っています」
20年かけて充填し続けた“氷川きよし”を、これからは放出し続けるのかもしれない。