女性アナの独立背景には、
悲しい“女性差別”があった?
女性アナウンサーの場合、男性アナウンサーよりも独立のタイミングが圧倒的に早いのはなぜだろうか。そこには、日本社会の“女性の価値を若さに見いだす”悲しい事情があるそう。
「“アナウンス技術より見た目の美しさや魅力が優先される”という女性差別があるように思います。同時に、女性は現実的なので、彼女たちもこの状況を受け入れ、“若さと美しさ”を武器にしている場合も多々あり、問題をさらに根深くしているのが現状。人気に加えて実力も備えた有働由美子さん(元・NHK)などの例があるので、一概には言えませんが、若ければ若いほど、“タレント的価値”があるとされて、男性に比べて独立が早くなりがちです」
その証拠に、女性アナウンサーから「アナウンス技術を見てもらえるとうれしい」というコメントをよく耳にする。“自身の価値があるうちに、技術を認めてもらえている場所で働きたい”と考える女性アナは少なくないようだ。
「ほかにも、結婚・妊娠・育児のこともあります。家庭を持つと時間の確保が難しくなるため、仕事量のコントロールのためにフリーになる人も少なくありません。日本社会では、いまだ育児は女性の役割という見方が強く、『産休制度の遅れ』や『男性の育児参加不足』なども、あながち無関係とはいえないでしょう。
もちろん“自分で授乳し、育児や家事をしたい”という考えは尊重されるべきですが、同時に“働きたい”という思いも尊重されるべき。さまざまな生き方が肯定される社会に向けての過渡期だということも、こんな傾向から透けて見えます」
時流という点では、“働き方改革”や、さらには“視聴者のテレビ離れ”という事態も、アナウンサーの独立とは無関係ではないという。
「昨今の『働き方改革』の流れで、会社の仕事を大量にこなさなければならないことに不満を持つアナウンサーや、人気アナばかりに仕事が集中していることに不満を持つアナウンサーは相当数います。アナウンサーは基本的に愛社精神の強い方が多いのですが、視聴率や営業不振で局の勢いが衰え、それでも給料は上がらないまま体力の限界を迎えたとき、やりたい仕事がまるで回ってこないといった事態に際し、その“愛”が紙一重である“憎悪”に変わることもあるでしょう。局を離れて活躍するアナウンサーの成功から、最近はフリー転身の傾向が加速しているように見えます。今後も勢いのない局からフリーアナウンサーが次々と出てくることは大いに考えられます」
安定と高収入を両立させ誰もがうらやむ職業であると思いきや、勤め人としての悩み、さらに人気商売ゆえの過酷な競争にさらされているなど、大きなストレスがかかっていることがおわかりいただけたのではないだろうか。
<今回のセキララアナリスト>
衣輪晋一さん
メディア研究家・コラムニスト・コピーライター。サブカルライターを経てインドネシアでボランティア。帰国後は文芸批評と民俗学の「フィールドワーク」をメディア研究に取り入れエンタメ記事を作成。『TVガイド』などの雑誌、新聞、Web、ドラマ公式HPなどで執筆。
Twitter(https://twitter.com/shinichikinuwa)
<文/雛菊あんじ>