テレビ出演を繰り返すなかで、草薙は「成長」した。しかしそれは、テレビへの「順応」でもある。初期の草薙が帯びていた異物感(ヤバいやつ感)は希釈されてしまう。果たして、それは正解なのか。芸人としての彼の今後にとってマイナスではないのか――。
「負けキャラ」からの脱却
しかし、そんな心配を払拭(ふっしょく)するように、先日、メイプル超合金のカズレーザーが草薙を次のように評した。「ずっと腕をあげてるんで、そういう人、尊敬しますね」(テレビ朝日系『ロンドンハーツ』2019年11月12日)。
彼は負けキャラのまま数年は仕事があったかもしれない。にもかかわらず、そこから自分をアップデートしてきた。ある仕事での失敗を、次の仕事での向上に活かしてきた。前に出る力を身につけて、負けキャラを脱却しようとしてきた。
草薙は負けキャラでありながらも、そこから脱皮する道に足を踏み出し続けてきたのだ。それは、負けキャラとしての居場所をテレビの中に築いてきた先行世代が、あまり選ばなかった戦い方だろう。キャラは一度決まってしまっても変えられる。そんな可能性を感じさせたりもする。
道なき道をゆく草薙。これから彼はどんな姿を見せてくれるのか、それはまだよくわからない。外から設定される目標や予測をはみ出しながら進む変化。「成長」とはそんなプロセスのはずだ。だからこそ面白く、目が離せない。
文・飲用てれび(@inyou_te)