土に還る“樹木葬”を選んだ
前述の『真光寺』が管理するお墓にも、妹夫婦は5~6回は足を運んだという。千葉市内から車で1時間ほどの場所にある。市原さんが選んだのは“樹木葬”だった。
「ご主人が亡くなったとき、千葉県にある墓地を探し回られたそうで、その中でこちらを選んでいただきました」
というのは、生前の市原さんに会ったという、前出の職員。遺灰を海にまく『散骨』と違い、樹木葬は墓碑を置くので、お墓参りができる。
「骨壺はなく、骨をそのまま土に埋葬するのです。市原さんは里山の雰囲気が気に入り、“土に還る”という理念もお気に召していただきました」(真光寺の職員、以下同)
もともと竹やぶだった地区を伐採し、桜や桃やサルスベリなどの木々を1本ずつ植えている。そのため、春から夏には、いつも花が咲く。
市原さんはエノキが気に入り、この木の下で土に還り、樹木という新たな命に生まれ変わることを望んだという。
「ご夫婦で緑がお好きだったようで、自宅でも『カポック』という観葉植物を大事にしていると話していました。ご主人の葬儀では、最後に参列者と歌って別れを惜しんでいましたよ。お墓参りには、ミッキー吉野さん夫妻が一緒でした。いつもミッキー吉野さんが、市原さんのお世話をしていた感じでしたね」
年配の女性ファンが数多くお墓を訪れる
今では市原さんを偲(しの)んでファンがお墓を訪れている。
「今年に入ってからも、命日が近いということで、さっそく来られていましたよ。ご年配の女性が多いですね。ご家族のお墓参りに来た方も“市原さんのお墓はどこですか?”と、よく聞かれます」
墓碑に本名の《塩見悦子》と彫らなかったのは、市原さん自身が「それじゃあ、ファンの方がいらしてもわかんないわね」ということで、旧姓の《市原悦子》にしたのだそう。
1年前に報道されたことと、違う点もあった。
「真光寺は、曹洞宗という宗派ですから、こちらでお墓をつくるということは、曹洞宗の信徒になっていただくことが前提です。無宗教だからという方はお断りしています。この場所がとても気に入ったけど、クリスチャンだから泣く泣く諦めたという方もいらっしゃいます。そういう方のためには、NPOがやっている樹木葬もあります。宗教に興味がない方は、そちらを選ぶこともあります」
真光寺の樹木葬は、三十三回忌までの永代供養が約束されている。
「お子様がいなくても法事は行えます。市原さんもお子様がいないので、誰にも面倒はかけたくないから、こちらにしたということもあったようです。その後は、骨が残っていたら合葬させていただくことになります」
寺の中には、位牌(いはい)を置いている牌堂がある。市原さんの位牌を見せてもらうと《遊戯悦楽信女(ゆうぎえつらくしんにょ》という戒名が記されていた。豊かな緑の森の中で、きっと喜びと楽しみを感じていることだろう。