たった30cm、それでも開かない車のドア
ここ墨田区にある『東京消防庁本所防災館』は、体験を通じて防災の知識と備えを学べるとあって、都外や海外からも多くの人が訪れる。池袋、立川にも東京消防庁直轄の防災館があるが、本所防災館は都内で唯一、冒頭の「暴風雨体験」や「都市型水害体験」ができる。
「東京都の下水処理能力は1時間に50ミリ以下の雨量を想定しています。それを超えると、地下で受け止めることができず地上にあふれ出し、都市型水害と呼ばれる都市特有の災害を引き起こします」(中島さん)
例えば、新宿区を1時間100ミリの集中豪雨が襲った場合、その雨量は学校にあるプールの約5000杯分に相当する。うち半分が地上にあふれ、アンダーパス(地下道)などにたまり、冠水。車の走行、地下鉄の運行に多大な影響を与えてしまう。
その「都市型水害体験」では、冠水時の地下の非常ドア、自動車が浸水して水圧がかかっているドアの開放にチャレンジ。それぞれ10cm、20cm、30cmという具合に、異なる水の高さを想定した擬似体験ができるのだが、水圧がすさまじくて開かない!
特に、30cmの水圧の負荷は、「力士と稽古しているのかな?」と錯覚するほどにドアがビクともしない。
重さにすると36kgほどの負荷だというが、荷物を抱え上げる感覚とはまるで別物。
同様に乗車時ともなれば、狭い座席で動きもとれずどうにもならない。押しながら「窓ガラスを割る緊急用ハンマーを常備しよう」と悟ること必至だ。
また、冠水時は足元が見えないため「傘を杖がわりにして障害物を確かめながら歩く」など、“もしも”のときに役立つ実用知識もたくさん授けてくれる。
「各自治体が発行しているハザードマップを参考に、避難場所や危険区域を事前確認しておくと水害への備えになります」(中島さん)
起きてから探しては遅い。いま1度、自分が住む地域の自治体のHPをチェックしておいたほうがいいだろう。