このほか、『麒麟がくる』では現在、子役が演じて話題になっている徳川家康も、丸顔タヌキおやじとして親しまれるが、丹波哲郎が演じて“ミスターボス”になっちゃったり('89年『春日局』)、思いっきり面長の滝田栄がきまじめ人間として演じたり('83年『徳川家康』)、内野聖陽がギラギラと野望を抱く腹黒じいさんになって出てきたりと('16年『真田丸』)、型破りの例は数多い。

長谷川博己演じる光秀は、異業種からの参戦が多かった

 もちろん、型破りな明智光秀も出てきた。興味深いのは、なぜか異業種からの参戦が多いこと。

 代表例が『春日局』の五木ひろしだ。光秀得意の連歌では、まるで歌い上げるような発句を見せた“五木光秀”。まさにレコード大賞歌手の貫禄だった。

 一方、信長・緒形直人、帰蝶・菊池桃子、妹の市・鷲尾いさ子、織田信行・保阪尚希、木下藤吉郎(羽柴秀吉)・仲村トオル、秀吉の妻ねね・中山美穂、徳川家康・郷ひろみと当時のアイドル大集合の『信長 KING OF ZIPANGU』('92年)ではモテ男界からマイケル富岡が光秀に。

 ほかにも『軍師官兵衛』では落語界の春風亭小朝『真田丸』では文化人の岩下尚史も光秀役だった。岩下は、怖い顔をした信長(吉田鋼太郎)にキックされ、ずいぶん痛そうだった。

 そして迎える「本能寺の変」。“異業種光秀”は、みんな甲冑が似合ってないのもポイントだ。

 “染谷信長”だけでなく、今後も曲者がいろいろ登場する『麒麟がくる』。どんな型破り伝説を作るか。チェックしたい。


ペリー荻野
時代劇研究家・時代劇コラムニスト・ラジオパーソナリティ・放送作家。1962年、愛知県生まれ。大学在学中よりラジオパーソナリティを務め、コラムを書き始める。女流時代劇研究家として知られ、時代劇主題歌オムニバスCD『ちょんまげ天国』をプロデュースし、「チョンマゲ愛好女子部」を立ち上げるなど時代劇関連企画の陰にこの人あり。著書に『ちょんまげだけが人生さ』(NHK出版)『時代劇を見れば、日本史の8割は理解できます』(共著・徳間書店)ほか。