安倍首相の動画投稿は、こうした人気に便乗する形で国民に外出自粛を呼びかける狙いがあった。しかし、動画がアップされた途端、「星野源を政治利用するな」「友達と会えないことや、飲み会ができないのがつらいんじゃない。症状が続いているのにPCR検査もしてもらえないのがつらいのです」などの突っ込みが殺到。

 数時間後には「何様のつもり」「政治利用」などの言葉がツイッターのトレンド上位にランクイン。再生数は12日夜で100万回を超え、13日になっても増え続けている。

蓮舫氏は「なぜ誰も止めなかったのか」

 首相日程などから、動画は11日までに撮影されたとみられる。実際の動画作成や投稿はこれまでと同様、首相官邸の広報担当者によるものとみられるが、安倍首相の意向を踏まえたものであることは明らかだ。「なかなか徹底されない外出自粛を、首相自身が促す多角的手法の一環」(関係者)とされる。

 この首相の投稿について星野氏は12日深夜、自らのインスタグラムでコメントし、「安倍晋三さんが上げられた“うちで踊ろう”の動画ですが、これまで様々な動画をアップして下さっている沢山の皆さんと同じ様に、僕自身にも所属事務所にも事前連絡や確認は、事後も含めて一切ありません」と説明した。これは、政治利用との批判を意識し、官邸との連携を明確に否定したものだ。

 これについて、立憲民主党の蓮舫副代表は「ご本人のお考えだとすれば、何故誰も止めなかったのか。側近と言われる方々の発案だとすれば、『これはおかしい』となぜ総理は言わなかったのか」となど厳しく批判。自民党内でも「すぐ批判されると考えなかったとすればKYすぎる」(自民若手)との声が出た。

 そもそも、新型コロナウイルスによる感染拡大が戦争に匹敵する国難であることははっきりしている。感染拡大を阻止するため、一層の外出自粛を求めた安倍首相の呼びかけは「当然のこと」(官邸筋)ではある。ただ、「TPO(時と場所、状況への配慮)に欠けたことで、ネット民からディスられる(攻撃される)結果となった」(同)のが実態だろう。