娘と孫にようやく会える
当時、船内に入った医療チームの発表では、「死にたい」「飛び降りたい」と不調を訴える客もいたようだが、妻の育子さん(仮名)は振り返る。
「私たちは、精神的にまいったような人は見かけませんでした。でも、“あの人は今日、見ないね。感染したのかな?”という心配はありましたね。後は、PCR検査を待つ期間も、不安は正直、ありました」
下船後は2週間の自宅待機となったが。育子さんは、とりわけ1週間が山だと考えていたそう。
「その間、発病しなければ大丈夫だろうと。それを越えて2週間も過ぎて、ようやく安心しました」
しかし、忠雄さんはさらに2週間が必要だと考えていた。
「用心に用心を重ねてね。それも無事に過ぎて、よかったですよ。このゴールデンウイークに、近場にいる娘と孫にようやく会えるんです」
そう期待を膨らますが、外出自粛要請が続くなか、さらなる我慢が必要かもしれない。
さらに、クーポンがあるからというわけではなく、クルーズ旅行もあきらめていない。
「何よりクルーズ船は設備も食事も整っていて楽しいんですよ。大変な目にはあいましたけど、クルーは本当によく働いてくれて私たちを励ましてくれました。だから、もう1度、乗ってみたい気持ちはあります」(忠雄さん)
再びダイヤモンド・プリンセス号に乗れる日まで、海野さん夫妻は粘り強く、待ち続けるつもりだ。