また、ジャニーズが主戦場としてきた、歌番組やバラエティー番組などの“テレビの力”が落ちてきたことも影響している。
「テレビ局はジャニーズの人気にあやかってヒット番組を生み出してきた経緯もあり、たとえ他事務所が男性アイドルグループを売り出そうとしても、各局が“ジャニーズと共演させない”など“忖度”する風潮が見られました。しかし、若者のテレビ離れが進む昨今では、ジャニーズが多く出演するテレビに頼らずとも、自分が応援したいアイドルをネットで選択できる時代になったのです」(広告代理店関係者)
昨年7月にジャニーズのカリスマ・ジャニー喜多川さんが他界し、また公正取引委員会によるジャニーズへの“注意”も、ジャニーズ帝国の弱体化がささやかれる一因ともされる。
「また嵐や関ジャニをはじめとする“屋台骨”は、軒並み30代後半に差し掛かるオジサン。次代を担う“キンプリ”や“スノスト”がデビューしたとはいえ、まだ他を圧倒するほどではありません。男性アイドル産業は、今が新規参入のチャンスと言えるのではないでしょうか」(前出・広告代理店関係者)
時は来たーー。吉本にしてみれば、待ちに待ったアイドルビジネス拡大のチャンスが到来したということか。ジャニーズへの“宣戦布告”だ。
「対ジャニーズ」ではない吉本の戦略
「たしかにジャニー(喜多川)さんが亡くなり、嵐の活動休止宣言もありました。また公正取引委員会の件もあり、相対的にジャニーズの影響力は弱まっていると言えるのかもしれません。だからと言って、吉本興業がその間を縫って新しいアイドルグループを作り、ジャニーズと正面からぶつかろうとしている、ということではないと思います。
それよりも、地上波テレビがエンターテイメントの中心だった時代から変化し、今はネットを通じていくらでも情報を広げられますし、新しい音楽、新しいアイドルに若い女性が熱狂することがわかりました。また『BTS』のように国境を越えて世界に通じるグループが生まれたように、K-POPのノウハウを生かすことで国内、アジア圏、さらに世界へとつながる大きな可能性を感じてこのプロジェクトができたのではないか、と考えられますね」
とは、前出の日経BP総研上席研究員の品田氏。あくまで吉本は“対ジャニーズ”ではなく、より先を、「JO1プロジェクト」は世界を見据えたビジネスなのだとも。
「かつては音楽であればJ-POPを真似ていた時代のある韓国ですが、世界に、特にアメリカにモデルを求めた結果、J-POPとK-POPは明らかな差が出てきました。そこが韓国のすごかったところで、映画『パラサイト』がアカデミー賞を獲ったように、“世界から見ると何が受けるのか”というのを真剣に考えて、みなが仕事や留学で学び、韓国エンターテイメント業界に持ち帰ったことが大きな転機になったと思います」(前出・品田氏)
世界から見れば“ガラパゴス”化したとも言える国内エンターテイメント。競争化が起きつつある現在のアイドル業界こそ、本来あるべき正常の姿なのかもしれない。