今回のコロナ禍では、家庭環境の悪化も子どもたちを追い込むケースになることが想定できる。『心理相談室サウダージ』のカウンセラーで室長の前田昭典さんは、
「特に考えられるのは急激な生活苦、貧困問題です。休業、倒産、雇い止め、派遣切りで生活が苦しくなったご家庭もあるでしょう。大人も精神的に不安定になり、父親が不機嫌で殴られた、母親もイライラしてご飯も作ってくれないというような話はすでに珍しくありません」
死にたい子どもに親までも引きずられてしまい、心中を選ぶ危険性も考えられる。
「一緒に死ぬのではなく、お子さんのためにも生き延びてほしい。相談場所は状況に応じてありますので」(前田室長)
内容に応じて支援先が見つかる『自殺対策支援センターライフリンク』のサイトや『チャイルドライン支援センター』『心理相談室サウダージ』のオンライン相談などを利用したい。
頑張りすぎる親の気持ちが子どもを追い込む
不登校になる子どもが増えることも想定される。
「いじめ未満、ちょっと人間関係が気まずいまま休校になった子、部活でうまくいかない、勉強で挫折しそう、といったしんどさを抱えている子も学校再開はプレッシャーになっています」(須永さん)
不登校の専門紙『不登校新聞』の石井志昴編集長は、
「東日本大震災のときもそうでしたが、大きな災害時同様、先の見えない不安を大人が抱えていると、子どもたちも元気がなくなり、不登校傾向になりがちです」
と世代間で負の気分も連鎖することを示唆。一方、頑張りすぎる親に対しては、次のように注意を促す。
「学校の時間割どおりに進めようと頑張っても、学校再開に不安がある子どもたちは、手につかない。できないことを親が怒る、子どもは反発する、という連鎖が起きかねない。これは不登校初期のような状態です。すると今度は子どもがそのイライラを弟や妹、ペットに向ける危険がある。親の“ちゃんとさせなきゃ”という気持ちが、逆に追い詰めてしまうことに」
学校に振り回されず、子どもの目線で
学校に行きたくない子にとって、“いつ始まるのか?”という不安は常に続いており、一喜一憂している状態。再開のカウントダウンとともに登校というプレッシャーは膨らんでいく。
子どもたちをそんな不安から救済するために石井編集長が発信するキーワードは、『開き直り』『親子の対話』『距離感』だ。親はあまり学校に振り回されずに、子どもの目線に立って、必要な学びや環境を考えて整備することが必要だという。
「勉強は半年や1年遅れても、取り戻せます。子どもが不安に感じているならば、夏まで休む、今年いっぱい休むなど開き直るのもひとつ。学校に行かないことは憲法違反でも法律違反でもありません。子どもと対話し、望む学びの方法を整えるのが親の義務です」
さらに、外出自粛と在宅勤務で四六時中、一緒に入れば苛立ちもあるだろう。
「子どもにイライラするのなら、少し離れて、冷静さを取り戻すのも必要」