当初は妊娠目的だったが
その後も続いた“関係”
「私はあくまでボランティアとして匿名の精子提供を行っています。A子さんから謝礼をもらったことはありません。
彼女が妊娠したのは昨年の6月ですが、それ以降も何度も会いたいと言われ、同じホテルで会っていました。7月、8月、9月とずっと会って、そのたびに性交渉もしています。私は妊娠したところで役割を終えていたはずなので断っていたのですが、彼女にしつこく迫られていたので……」
ボランティア精子提供でしかないはずの2人の関係が、いつしか男女のドロドロ愛憎劇に形が変わり始めていた。
B氏が事実関係をつなぐ。
「彼女とは今年の3月まで会っていて、身体の関係を求められました。嫌です、と断ると、ネットで誹謗中傷されました。私は彼女に対して恋愛感情はありませんが、彼女は私に好意があります。LINEで、何度も妻と別れて結婚してほしい、と迫られています。何度も断っています」
確かにLINEの画面には《いっぱい仲良しして、子孫をいっぱい繁栄しようね》《Bちゃんのエッチは気持ちいい》などと、性交渉や結婚を迫るA子さんのメッセージが大量に送られていた。夫について《主人おじさんすぎて臭い》《DVをされている》などといった記述もある。
当初は妊娠目的であっても、30代のA子さんが20代のB氏と「週に2、3回」のセックスを3か月近く行えば、そこには快楽も生まれ、情もわく。恋に落ちてしまうことだってある。それを冷静に制御できなかったのだろうか。
A子さんは、
「確かに、妊娠が発覚した後も、何度かB氏といつものホテルで会っています。性交渉もしています。いま思えばおかしいですよね。どちらから誘ったのかはよく覚えていませんが……」
と、あいまいにしつつも、妊娠後も性交渉があったことを認めた。
“ウソ”の精子で妊娠し、出産したことを放置できないA子さんは、弁護士に相談し、警察署にも駆け込んだ。B氏は事情を聞かれ、妻にも会社にも精子提供の事実がバレ、肩身が狭い。「今後、精子提供をすることはない」と唾棄するが、赤ちゃんに対する責任は持ち合わせている。
「彼女と本気で争うことになったら、旦那さんにすべてを知られることは明らかです。もしA子さんが離婚することになったら、生まれた赤ちゃんを養うことは難しい。そうしたらどうやって彼女は生きていくのでしょう。私は多国語を操ることができ、職も安定しています。万が一のときは、子どもの親権を主張する考えもありますし、妻にも承諾を得ています」
2人の愛憎劇の幕がいつ下りるのか、当事者にもシナリオは見えていないようだ。両者の言動から浮かび上がるのは、精子提供ボランティアに潜む、あいまいさゆえの危険性だ。
前出・宮崎医師は、
「日本産科婦人科学会としては認めていませんが、ネットの精子提供は法律で明らかに禁じているというわけではないので、横行するのでしょう」
と今後の広がりを見通す。
医療機関の介在しない人工授精がネット上で野放し状態の今、母体や精子提供者の身体的・精神的安全を担保する施策が早急に求められる。