数ある中でも、何か起こりそうな部屋を“あえて”選んでいるというが、8年弱もの間、普通の物件を契約しないことに何か理由は? メリットについて聞いてみると、
「芸人として言うなら、単純に、こうして取材を受けられるというところです(笑)。ほかだと、金額ですね。家賃が安くなるだけじゃなく、敷金礼金がないところも多いので初期費用はだいぶ抑えられます。
大家側は次の人を早く住まわせたいみたいで。『大島てる』という事故物件紹介サイトが有名になってきているので、そこで検索して自分の住んでいるところが事故物件だと知り、クレームを入れてくる人がいるらしいんですよ。そうなると大家側が不利な立場になることが多くて、裁判を起こされるとややこしい。そんなトラブルを避けるためにも、いまは事前に告知する大家さんが増えてるそうですよ」
どうしても気になる人は、覚悟を決めて一度、自分の部屋を調べてみるのもありかもしれない(大家さんへのクレームは推奨していません!)。
人形と“共演”した女の子の手首に……
そのタニシさんが住む部屋には、どうしても触れずにはいられないモノが。確実に普通ではない雰囲気を纏っている気がするんですが、その日本人形はいったい……?
「あぁ、これは孔子(こうし)くんという名前の人形です。古物商から僕が引き取って。
この間、朝のワイドショーのロケ取材で僕の部屋にカメラが来たんですが、移動させようとしたら持ち方が悪かったのか首がいきなりポーンって飛んで、テーブルの上に落ちて割れちゃったんです。パリーンって、木っ端微塵に。それで修理したんですよ。
実は割ってしまう1週間くらい前に、孔子くんの首がゴミ袋の上でピョンピョン飛んでる夢をマネージャーさんが見たっていう話を聞いていて。なんか関係があったんですかね」
そう言って見せてくれた孔子くんの顔部分には、割れた跡がはっきりと残っていた。
「そしていちばん付き合いの長い人形が、この“みゆき”です。とある番組につれていったこともあって、そのとき“あの人形が怖いです”って共演者のある女の子がすごいビビってて、それからしばらく、その子の手首に毎日一本ずつ傷が増えていくという怪現象が続きました。
でも何が怖いって、もともとはお笑い養成所の小道具だったのでコントで使ってたんですけど、みゆきを使うと絶対にスベるといった別の怖さが(笑)。養成所が移転するタイミングで僕が貰い受けて、それからずっと一緒に住んでます」
もともと霊感は持っていないというタニシさん。呪いや祟りについては、「受ける側が強ければかからない」という持論を持つ。怖がることがいちばんよくないと話していた。
「唯一、一度だけ金縛りにあったことがあります。中学生の冬だったんですけど、仏教とプロレスに興味を持った時期がありまして。みちのくプロレスという団体に新崎人生というプロレスラーがいて、全身にお経を書いていたんですよ。僕も同じことをしたいと思って、全身に自分でお経を書いて、家の裏にあった墓苑に行き写真を撮ったりしていたら、その日の晩に金縛り。こんなんしたらあかんねや、って思いました」
しかし中学のスキー合宿の出し物で、懲りずに同じことをしたそう。当時の写真を見せてくれながら、「一人でお経流して手をあわせるパフォーマンスをしたんですけど、めっちゃスベりましたね」と、悲しい思い出を語ってくれた。
事故物件に住むことに対して抵抗感はまったくないそうだが、心配しているのは治安。気をつけてほしいと、読者にも呼びかける。
「家賃が安いので、反社会的な人たちが集まりやすいという点もあります。犯罪に巻き込まれる可能性が高くなるということは、心霊現象なんかより単純に怖いのでオススメはできないですね」
次はいったい、どんな“怖い”物件に住むのだろうか。
松原タニシ(まつばら・たにし)
1982年4月28日生まれ。『事故物件住みます芸人』として活動し、著書に『事故物件怪談 恐い間取り』『異界探訪記 恐い旅』など。第二弾『事故物件怪談 恐い間取り2』が7月6日より発売中(いずれも二見書房)。8月28日より亀梨和也主演で公開される映画『事故物件 恐い間取り』の原作者。