矢沢永吉の映像を見れば「耳かじらないで!」。そのガヤを発する理由となった矢沢永作、三浦カズノコ、つんつくが起こした“事件”(※)をよどみなく詳細に語ることができてしまう。藤本のガヤは「データ派」なのだ。
彼の頭のなかには豊富なテレビ知識が、詰まっている。ひとたび、関連のある単語が話題に上がると、それがトリガーになって、矢継ぎ早に「ガヤ」が出て来る。フジモン以上に「テレビっ子」であることが、武器になっているお笑い芸人はなかなかいない。
フジモンの「ガヤ」は、“その他大勢”ではできないフジモンならではの仕事だ。だからこそ、レギュラー番組0本でも強烈な印象を残しているのだろう。
「勝手な使命感」
しかし、そのガヤもコロナ禍の中ではなかなか使うことができない。長時間の収録は難しく、そもそもガヤ要員を配するような多人数の収録ができない。フジモンは最大の武器を封印されたようなものだ。けれど、フジモンの仕事が減ったという印象はない。
彼のスタンスとして「芸人としてのプライドなど1円の価値もない」というのがあるという(『バナナサンド』20年8月12日)。
仕事を選ばず、来た仕事に全力を尽くす。これは「勝手な使命感」で発し続ける「ガヤ」と同じことだろう。『アメトーーク』(テレビ朝日系)で見せる「パクリ芸」も、「関東芸人と関西芸人のかけ橋になりたい」と関東の芸人に「ガサツに」話しかけていくのも「勝手な使命感」だとフジモンは言う。
「勝手な使命感ばっかりですよ、誰からも頼まれてないのに(笑)。とどのつまりは、テレビを元気にしたいというのがホントにあるんですよね」(「文春オンライン」17年4月10日)
きっと“財産分与”でもらったと「チョリース!」を連発していたのも「勝手な使命感」があったからだろう。たとえスベってもただひたすら笑いを取ろうとする彼が番組や共演者たちを助け、結果として窮地に立たされたフジモン自身を救っている。
〈文/てれびのスキマ〉