ネット民に受ける非リア充ぶりや悪口
しかし、同時に古市氏はネットの申し子のような部分もあるのです。
■恋愛至上主義ではない
テレビに出ることで人気者になった古市氏が、アイドルの彼女でも作ろうものなら、成功者同士の組み合わせで、面白くもなんともないでしょう。しかし、古市氏は『ワイドナショー』(フジテレビ系)で、「子どももキスも性行為も嫌い」と発言して話題になります。キスが好きでない理由は「唾液の交換が好きじゃない」というぶっとんだもので、人気者でありながら、非リア充志向のような発言をする古市氏を支持する人も多いでしょう。
■悪口を言う相手のチョイスがうまい
ネットのだいご味の1つは悪口といっても過言ではないでしょう。もちろん、一歩間違えれば、誹謗中傷になってしまいますから注意は必要ですが、悪口に慣れたネット民にとって、大物に気を使ってヨイショするテレビの世界はきれいごとにしか思えなくて物足りないかもしれません。そこで古市氏の出番です。たとえば、古市氏は『とくダネ!』(フジテレビ系)のレギュラーコメンテーターですが、同番組に出演し、自民党総裁選に立候補すると表明した石破茂元幹事長に対し、「石破さんって自民党内で評判があんまりよくない、人気ないって言われてますけど、ご自身ではどう分析されていますか?」とご本人の前で「おまえ、好かれてないよ?」と言ってのけるのです。
勇気がある行動だと思う人もいるかもしれませんが、私に言わせるのなら「怒れない人を選んで面前で悪口を言う」「やり返さない人を選んでいる」のが古市氏のズルいというかヤバいところだと思うのです。究極の人気商売ともいえる政治家が、カメラが回ってるところで、若い古市氏を怒ったら「大人げない」と言われて、視聴者にマイナスイメージを与えるでしょうから、怒れないと思うのです。また今回の総裁選、石破氏の劣勢が伝えられていますが、旗色が悪い人を選んで、強気な物言いで責めていくように感じます。
古市氏が「タレントでない」ことも毒舌をはくのに、プラスに働いているのではないでしょうか。芸能人が先輩芸能人や目上の人に非礼を働こうものなら、事務所の監督責任が問われますし、本人の芸能人生命を縮めかねません。しかし、古市氏の場合、「タレントではないから」と逃げることができます。
味方にするべき権力者を判断する嗅覚がすごい
考えてみると、古市氏はその場で誰がいちばん権力を持っているか、誰を味方にすればトクなのかを判断する嗅覚が優れているのではないでしょうか。特にすごいと言わざるを得ないのが、古市氏が徹底的に「倍率の低いところ」を狙うことだと思うのです。
新潮社出版部部長・中瀬ゆかり氏が『AERA.dot』で連載していた「50代ボツイチ再生工場」によると、古市氏は社会的地位のあるジジババにLINEをインストールしてあげて、秘書などを通さずに直接、食事に誘うそう。
最近の若い人は、目上の人と食事に行くことを嫌うという話を聞くことがありますが、古市氏はその逆を行っているわけです。自分になついてくる若い人とそうでない人、権力者がどちらを引き立ててやりたいと思うかは言うまでもありません。みんながやらないことをあえてすることで、労せずトクをすることができるのです。