ライヴハウスに通う側の声

 小池都知事は「ライヴハウスは配信を使うなどして」と言い、東京都はそのための補助金を出しますとも言ってきたが、そうそう簡単ではないようだ。

「それにもう、配信疲れがあります。8月は実は1本しか配信をやりませんでしたが、投げ銭が明らかに7月までの1/5ぐらいに下がっています。見る側も最初は支援しよう!とか、普段見られないものが見られる! と投げ銭してくれましたが、見たい配信も重なってきたし、投げるお金がなくなってきました。そうそう長続きするとは思ってなかったですが、意外と早く来ました」

 イッシーさんのお店では9月12日、山本精一さんのライヴを行って、半年ぶりにお客さんを20人ほど入れた。お店は地下にあり、換気はどうしているんだろうか?

「うちは、もともと付いているエアコンと換気扇を稼働させれば換気は十分だと思います。タバコの煙も溜まることなく、すぐに消えていました。もちろん地上階にあるお店のように窓を開け放つことはできません。じゃ、さらにどうするか? それを考えると店をやるモチベーションが下がっていくんです……」

 つい、うっかり、換気はどうですか? なんて質問してしまったが、聞くべきではなかった。それはお客さんが尋ねることであり、お客さんとライヴハウスの信頼関係で構築していくべきものだ。

 では、ライヴハウスに通う側はどう考えているのか? 長年ライヴハウスに通ってきた、ロック・フォトグラファーの第一人者である畔柳ユキさんは、そこをディズニーランドのような場所だと言う。

ロック・フォトグラファーの第一人者である畔柳ユキさん
ロック・フォトグラファーの第一人者である畔柳ユキさん

「ライブハウスは音楽をストレートに肌で感じ聴くことの出来る空間で、演者とのコミュニケーションをいちばん近くで体験できる所です。同じ価値をシェアできる人が集まる、自分たちの居場所なんです。なんというか、ディズニーランドのような意味を持っていると思うんです。夢を与えてくれ、その夢の中に生きられる。それがコロナ禍で不要不急だと言われたらそうかもしれないですが、夢と希望が詰まっている場所が消えたら、絶望しかありません。

 カメラマンの立場で言うと、ライヴ撮影のすべての原点であり、通過すべき場所。そこには原石が転がっている可能性も高い。今の状況は大切なものを全て絶っているんです

 畔柳さんは「配信にみんなが飽きてきているのは、生のリアリティがないから。自宅のパソコンやスマホから得られるものは限られています」という。一部のライヴハウスでは、ライヴ映像を飲食店などに配信。そこにファンが集まって共に楽しむといった試みも始まっているというが、それでも共有できるものは生にはかなわない。

 #SaveOurSpace #SaveOurLife #WeNeedCulture ……ミュージシャンやライヴハウスの人たちは救済を求める声をずっと挙げ続けている。ドイツなど諸外国では、文化芸術こそ大事だとして政府が支援策を次々打ち出している。支援はもう、待ったなしだ。菅さん、聞こえてますか? 

〈取材・文/和田靜香〉