制作サイドから見ても、ゆとりを感じさせるタモリの活動スタンスは魅力的。「タモリさん自身が楽しめるような番組なら出てもらえる」という期待感が持てる上に、2016年の単発ドラマ『天才バカボン』(日本テレビ系)で主題歌を引き受けたような裏方に回る遊び心もある。「ダメ元でオファーしてみよう」と思わせられる懐の深さは、大物芸能人の中では一歩突き抜けているのではないか。
アニバーサリー出演にふさわしい理由
『いいとも!』終了前より姿を見られる機会が減りながらも、存在感はまったく色あせず、むしろ親近感は増している。常に脱力した佇まいは一見、「『アッコにおまかせ!』や『ぐるナイ』のようなアニバーサリーの祝福ムードには合わないのでは?」と思うかもしれないが、もはやそれを超越してしまうほど別格の存在になっているのかもしれない。
ちなみにタモリは今年7月に放送された『水曜日のダウンタウン』(TBS系)の「古今東西日本人知名度ランキング」で3位の安倍晋三、2位の黒柳徹子らを抑えて1位に輝いている。芸能人に加えてスポーツ選手、政治家、歴史上の偉人などを含め、全年代の声を集めた調査だけに、現役であり続けるタモリの凄さがわかるだろう。
タモリがアニバーサリーなどの「ここぞ」で求められるもう1つの理由は、ひょうひょうとしたイメージとは裏腹に、義理人情に厚く、同業者思いの人柄。交友関係は幅広く、ナインティナインやSMAPメンバーのように、「偉大な先輩」という憧れに加えて、「タモさんのことが本当に好き」であることを公言する後輩は多い。
一方、同年代はタモリの懐に入って一緒に遊ぶようなケースが目立つ。たとえば、和田アキ子はタモリから言葉やくすぐりなどの軽いセクハラを受けるのが定番になっているが、和田は誰よりも楽しそうに笑っている。
大御所になるとイジられる機会が減る上に、自分の弱点を的確に突いてくるタモリはかけがえのない存在なのだろう。27日の生放送でも75歳のタモリと70歳の和田アキ子が、まるで小学生男女のような無邪気なやり取りを見せてくれるのではないか。
そもそもここまでの大物かつ高齢での現役は少なく、しかも生放送バラエティーに対応できる芸能人は見当たらない。その意味でタモリは75歳にして、過去の誰とも違う新しい存在感を放っているように見える。
今後も親交の深い明石家さんま、所ジョージ、笑福亭鶴瓶、中居正広がMCを務める番組を中心に、さまざまな長寿番組のアニバーサリーを祝うスペシャルゲストとして登場するだろう。
木村隆志(コラムニスト、テレビ解説者)
雑誌やウェブに月間20本強のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などに出演し、各番組のスタッフに情報提供も行っている。取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーでもあり、主要番組・新番組、全国放送の連ドラはすべて視聴。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』など。