両親の何かしらが身についている
実は毒蝮、1999年より聖徳大学で学生に福祉や介護の授業を行っている。授業にかける思いも、この本を書いた動機も、人生100年の時代に元気な老人を増やしたいという思いから。
「菅総理が、『自助、共助、公助』と言ったってんで、『自分で自分を助けられない人を助けるのが政治。それをしないで何が自助だ、公助が先だ』って声をあげてる人がいるってね。そりゃそうですよ。生活保護を受けている方に、何とか自分で頑張って、あとは隣同士で、ダメなら国が助けますなんて腹が立つよ。
そういう意味で、あの人は言ったんじゃないと思うけど、いまいちばん必要なのは公助だということは間違いない。だけど、俺はあえて、自助も必要ですよと言いたいんです。今は定年後の人生も長いよね。そのとき、自分でシモの始末ができて楽しく過ごせたら、それが最高の人生だと思うの」
新型コロナの影響もあって、世の中が暗いムードなのが気になるという。そのためには、本音で生きてきた自分や父母がいいサンプルになるのではないかと考えている。
近所の神社の縁日に、真っ赤に塗った乳母車にポン菓子を入れて売り歩くことを思いつく機を見るに敏な父に、料理の腕はいまひとつだけど人の話をとことん聞く母。本書を読めば、ご両親がいかに人を慮りつつも素のまま生きたかがよくわかる。
「いやぁ、オヤジみたいにだけはなるまいと思っていたけどね。美輪明宏さんには『背中にお母さんの背後霊が見える』と言われたし、両親の何かしらが身についているんだろうね。
また、オヤジやおふくろが言ってたことを思い出してみると、(立川)談志がこう言ってたなとか、亡くなった友達が言ってたことなんかも思い出すわけ。思い出すということは、花をあげるとか、お線香をあげることよりもいい供養になったんじゃないかと思ったよ」