床にキレイに並べられたお金

 部屋の片付けは、依頼者の家族(家族でない場合も)と一緒に行うこともあるというが、ほとんどの人は部屋に入ってくることはないという。

「一応、確認するんです。お部屋に入りますか? って。でも多くの人が入ろうとはしません。大切な人が亡くなってその部屋に入るのがつらいって方もいれば、やっぱりニオイや“見ることができない”って方ももちろんいらっしゃいます」

 だが、一緒に部屋に入らなくとも、小島さんは「話を聞くのも、私の務め」と、依頼者たちの思い出話や、ここで亡くなった人についての話にも耳を傾けるという。そうして聞いたエピソードが作品に反映されることも。

 22歳からこの仕事を始め、たくさんの現場を経験してきた小島さん。仕事を始めて間もないころに見た、“忘れられない光景”があると言う。

「床にお金がきれいに並べてあったんです。当時、私は何も知らなかったので、これがどういう意味なのか社長に聞いたところ、ここに住んでいた人の“今日も生きた証だ”と。自分が1日生きたことを、1日ごとにお金を並べていくことで、確かめていたんでしょう。不思議ですが、たまにほかの現場でも見かける光景です」

 数か月間、誰にも発見されずに時間だけが過ぎていたことを思うと、胸が痛む。ここの住人は、どういう思いを抱えながら、最期を迎えたのだろう。

孤独死とかゴミ屋敷って、他人事に捉えている方が多い。どうしたら自分のこととして考えてもらえるかなって思ったときに、思いついたのがミニチュアでした。この作品では、孤独死は誰にでも起こりうることで、他人事ではないですよっていうことを伝えたかったんです」

 作品ひとつひとつに、それぞれのメッセージが込められているのも特徴だ。

「例えば、周りに人がいても、ゴミ捨てのときに誰とも挨拶をしなかったりすると、周りの人も “なんだあの人”っていう感じで次第に距離が生まれてくる。だから、しばらく姿を見かけなくなっても気にならないし、明らかな違和感があっても、関わろうともしない。

 周りと喋りたくない人もいると思いますが、普段からちょっと挨拶するだけでも、避けられることもある。孤独死も避けられるかもしれない。だから日ごろから、少しでもコミュニケーションを取りましょうって、そんな思いも込めました」

 ミニチュアで小島さんが伝えたいこと、そして受け取る側は何を思うかーー。今後も、小島さんの作品を通して、その目に見えぬ“何か”を伝えていきたい。

ミニチュアの中には、自身の思い出の品も

「私は高校生のころに父親を亡くしています。当時、別々に住んでいて、たまたま家を訪ねたときに、父親が倒れていたんです。その後、病院で亡くなってしまったのですが、今思えば父親も孤独死寸前だったなと。そんなこともあり、孤独死は他人事じゃないと思っています。ちなみにミニチュアの中にカップ酒が出てきますが、実は父親が飲んでいたもの。自分の思い出を重ねて、作品に取り入れてみたりもしています