メンバー4人が幸せになってくれればいい
一方、同じ嵐でも松本潤は長いこと井上真央との交際を取り沙汰されているが、ツーショットを撮られたことは一度もない。かつて二股報道のあったセクシー女優の葵つかさに井上のことを触れられた松潤は《『それ以上、彼女のことを言ったら殺すよ』と突き放すように言った》(『週刊文春』2017年1月5・12日号)とされることからも、アイドルとして秘密主義を貫いていることがわかる。仲良し船長のブログにデート写真をアップロードされる大野とのコントラストがうかがえよう。
2008年にハレンチ写真が出回った際、大野は事務所から大目玉を食らったというが、のちの報道によれば、写真をリークしたとされる女性に対し《お前は何も悪くない。気にするな》とメールを送ったのだという。
デレデレした写真を週刊誌に載せられておきながら、なぜカッコいい感じでいられるのかは疑問だが、この言葉選びから見て取れるのは“俺はアイドルだから仕方ない”といった諦(てい)念ではないだろうか。
その後もプライベート写真が週刊誌やSNSに流出し続けたことからわかるのは、大野が「普通の人と同じように思い出を写真に残す」姿勢を変えなかったことだろう。たとえ彼が信用している人間から写真が世に出てしまったとしても、だ。
大野は2014年に雑誌のインタビューで「アイドルという職業にそれほど執着はない?」と聞かれ、こう答えている。
《若い頃と比べると今はそんなに『生き残りたい!』とは必死には思わないですね。(中略)それに、休みが決まっている生活って逆にうらやましいですよ。そこに合わせて頑張ることができるし、生活が立てやすいじゃないですか》(『SPA!』)
今回の報道によれば、シングルマザーのA子さんは、いちアイドルとして葛藤し、ほかのメンバーやファンのことも気にかけている大野をみて、《これ以上彼の負担になりたくない》《自由な生活をさせてあげたい》と口ぐせのように言っていたとの記述がある。だが、2019年の活動休止発表のあたりにA子さんのほうから別れを告げたとも。
まさにその活動休止の会見で大野が「何事にも縛られず自由な暮らしがしたい」と言っていたことを考えると、なんて切ない恋物語だ……と涙が出てしまいそうになる。恋人と写真を撮っただけなのに、それが世間に晒されファンに叩かれてしまう、それがアイドル。
今年いっぱい『Netflix』で配信されている嵐のドキュメンタリー『ARASHI’s Diary -Voyage-』。大野をフィーチャーした回『OHNO’s Diary』では、コロナ禍のなかアトリエで個展のための絵画制作をする日々が映し出される。破局して半年くらいのころだろうか。作業を終えると酒を飲みながらカメラの前で、
「ただ単にメンバー4人が幸せになってくれればいいだけの話だからね。ただそれだけ。ずーっと嵐のことしか祈ってないのよ俺」
とおぼつかない呂律で涙を流す姿に、やはり悟りの境地めいたものがみえてまた泣けてくるのだ。
〈皿乃まる美・コラムニスト〉