京都の映画村中をトリコに
台本に書かれていない場面までイメージしていたという。
「神戸事件で五代が日本とフランスの揉め事の仲裁に入るときあえてフランス人の前で侍たちに切腹をさせるというシーンがあったんです。確か2回目に会ったときかな、“五代が介錯をやったらどうでしょうか?”って突然、彼がやりだしたんですよ。美しい所作だった。
そのシーンは改稿でカットしてしまったので、次に会ったときに春馬くんに謝りました。彼は常に一歩前に踏み出して、みんなと一緒にもの作りをしたいっていう意思を明快に出してくれました。それが映画の随所に出ています。すごく頼りになった座長です」
春馬さんの演技力、集中力の高さにも驚かされたという。
「なかでもお母さんが亡くなって生家に駆けつけたシーン。あそこで泣いてるシーンは、サイズを変えて、2回同じ芝居を撮っているんです。春馬くんの集中力だったらできると思って。実際、感情も表情もすべて2回ともものすごいいい芝居でやってのけた。現場のスタッフも僕も泣かされましたね。そのときに、この『天外者』は三浦春馬でいける! っていうふうに確信した。本当にひと皮もふた皮もむけたというか、いろんな感情や表情を出してくれました」
五代が泣くシーンは数回あるが、すべて違う泣き方をしていることに気づく。気迫のこもった大胆な演技と、繊細で複雑な表情、佇まいでの表現。また、絵画のように印象強いキメの画に、何度も目を奪われる。
「それは彼の努力の賜物です。特に殺陣は、撮影の3か月くらい前から忙しい中、京都の撮影所に来てくれて。殺陣師さんやJACの役者さんたちと一緒にイチからみんなで練習をしました。
本人は時代劇で初主演することを不安がっていましたが、立ち回りが見事で、京都のみんなが目を丸くするほどアッという間に映画村の中に溶け込んでトリコにした。こんなに美しい主演は久々だな、春馬くんにはこれからも時代劇の主演がくるんじゃないかって話をみんなでしていたので、それだけにショックでしたね……」