的確な分析力

 SNSでエゴサーチを繰り返すという彼女は、「その番組の“民度”とかを測るのが好きで」とも語る。

「いろんな番組出させてもらうんで、ここの番組出たときに、すっげぇアンチが湧くとか、この番組は褒めてるコメントしか上がってこないっていうと、その番組の視聴者の民度がわかる。これに出たら損するとかも」(『お願い!ランキング』テレビ朝日系、2020年9月9日)

 新しい言葉を作る。わかりやすさを重視する。置かれた環境を分析し自身の露出を調整する。そんなウイカはとても戦略的であり、自己啓発的だ。普通の会社員にもセルフプロデュースが求められ、雇用されながらもフリーランス化が進んでいるように見える現在。他者のみならず今の自分からも常に差異化していくことが求められているようにも見える現在。そんな時代背景とも、ウイカの言葉は共鳴している面があるのかもしれない。

 実際、彼女はこう語る。

「ここ2~3年の間で、自己啓発本とか出していきたい」(『あちこちオードリー』同前)

 ただし、彼女の自己啓発的な言辞は付け焼き刃ではない。下積みが長いウイカ。中学生のころから、大手を含む芸能事務所のオーディションを受け続けたという。ただ、なかなか結果に結びつかない。そんな日々の中で、彼女は戦略を立て始めたという。

「こういう人間は、ほどよいアクで残っていかなアカン」(『おかべろ』関西テレビ、2020年6月13日)

 彼女が所属していたアイドルグループBiSのオーディションでは、履歴書の自己PRの欄には、「アイドルというのは『哀しいドル箱」と書いて『哀ドル』ではないだろうか」と書いた。歌審査では『まんが日本昔話』のエンディングテーマ「にんげんっていいな」をブルース調で歌った。それが「ほどよいアク」だったかどうかはともかくとして、周囲からの差異化を図った彼女の狙い通り、関係者の目に留まった。結果、彼女は現在につながるアイドルとしてのデビューを勝ち取ることになる。

「下積みっていうのは、恵まれなかった時期という意味ではなくて。ホントに1個ずつ1個ずつ積み木のように積んでいったからこそ高くなった。その中で1つでも何か抜いてしまったり、なかったことにしてしまうと、今(の私)はないと思っています」(『不可避研究中』NHK総合、2020年5月30日)

 テレビなどのメディアで語られないものも含め、ウイカのタレントとしての戦略は下積み期間の“実地”の中で1つずつ学ばれ、体得されていったものなのだろう。そんな彼女が、きっかけを手にするとすぐテレビ番組を席巻するようになったのは、当然と言えるかもしれない。

 たしかに、「ハンパねぇやつ」がテレビに出てきた。ただ、まずは彼女が「ハンパねぇやつ」になったのだ。

文・飲用てれび(@inyou_te