『デビュー』

いまでは国民的アイドルとして、日本でも海外でも活躍する嵐。彼らのスタートは船の上から始まった!

 ‘99年9月、アメリカのハワイ州ホノルル沖でデビュー発表会見が行われた。 ハワイで、“スーパーボーイ”たちを取材したカメラマンのAさんは、誰がデビューするかなど、事前情報はいっさいないまま現地に行ったと苦笑する。

「アイドル誌の編集長やスポーツ紙の記者など、20~30人くらいが集まっていました。報道陣の間では、当時ジャニーズJr.の中で人気が高かった、“滝沢秀明さんと山下智久さんの両方か、どちらかがいるのでは?”と話していたんです。私たちはクルーザーに乗って、デビューするメンバーが乗っている船と接近すると誰がいるかわかるという趣向でした。

 でも、船に乗っている顔ぶれを見ても誰だかわからなかった。報道陣の間では、“タッキーも、山Pもいないじゃん!”“この人たちがデビューして大丈夫なの?”という声があがっていました(笑)。当時の5人はJr.のファンであれば知っている人も多かったのですが、世間的にはあまり認知されていなかったんですよ」

仲のいいクラスメイトのような

 ただ、取材を続けていくうちに、彼らの持っている穏やかな空気感に気づく。

「みんないい子だったという印象ですね。‘97年にデビューして以来、大人気だったKinki Kidsは当時こちらの取材にあまり心を開いてくれず、周りのスタッフもピリピリしていました。嵐は対照的に、変な緊張感がなく、どのマスコミにも愛されていたと思います。彼らとディズニーランドに行くイベントでは、報道陣と一緒に記念写真まで撮ってくれたほど。メンバーのまとまりがよく、毎日顔を合わせているのに、あそこまで仲がいいのはすごいと思いますよ」(Aさん)

“癒やし系”の嵐は、徐々に知名度を広げていった。

「コアなファンよりも、“みんなの嵐”という感じで、親子で好きな人が多かったですね。男性のファンも多かった印象です。ほんわかした雰囲気ながら“グループのために”という熱い思いを持っているので、そこが同性から支持を集めたのでは」(Aさん)

 まだウブだった5人を取材した雑誌編集者のBさんは、当時を懐かしむ。

「みんな“俺が俺が”というタイプではなく、ちょっとシャイでした。相葉雅紀さんは当時から優しくて天然。大野智さんはアーティスティックで、人と見る視点が違っていました。二宮和也さんは独特な感性を持っていて、インタビューのなにげない質問に対しても、こちらが驚くような回答をしていたのが印象的です。櫻井翔さんと松本潤さんはよく発言するのですが、自分たちが話していても“相葉ちゃんはどう思う?”など、ほかのメンバーにも話を振っていましたよ」

 撮影の合間も5人で話していて、学校で仲のいいクラスメイトのようだったという。

「クラスで目立つポジションにいる男の子たちがワーッと騒ぐ感じではなく、そこまで目立たない男子たちが固まってゆったりと話しているような感じでした。戦隊ヒーローでいえば目立つポジションの赤レンジャーではなく、サポート役の青レンジャーのようなタイプ。みんな自然体で、不機嫌な表情を見せることも、媚びを売ることもありませんでしたね」(Bさん)

 そうは言っても、このころから個性の強いメンバーも。