ブレイク前でも売れそうな空気が
一緒に仕事をしていくうちに、5人と少しずつ打ち解けていったという。
「撮影現場で彼らと話しましたが、話題は近況や世間話ばかり。僕の中では、嵐のメンバーに会うのは親戚と会う感覚に近いかもしれません。撮影中でも、誰ひとりとしてナーバスになっていませんでした。終始、和気あいあいとしていて、スタッフから声がかかっても“じゃ、行ってきまーす”みたいな軽い感じ」
しかし、彼らにはほかのグループとは違う何かがあった。
「まだこれからという時期でしたが、売れそうな空気は十分ありました。監督の堤幸彦さんたちと、“嵐ってすごいブレイクするんじゃない?”と話していましたから。グループとしての品のよさや唯一無二の空気感があったんです。そういうのは作ろうと思ってできることではありません。きっと、神様がくれたギフトなんでしょうね」
照明を担当した石田健司さんも、嵐の“特別感”に気がついていた。
「撮影の合間に二宮さんが相葉さんに “休みの日、何してるの?”と聞くと、相葉さんが“僕、ボーッとしている”と答えたのを覚えています。撮影はハードで、朝の8~9時に始まって、終わりが明け方になるなど、20時間近く続くことも。5人も大変だったはずなのに、相葉さんが“休みの日はボーッとしてる”なんてほんわかした話をしているのを聞くと、すごく癒されたんですよ」
当時から5人それぞれに個性があったという。
「二宮さんと櫻井さんはしっかりしていて、相葉さんは天然なところがあった。大野さんは、物静かな印象。松本さんはドラマの出演経験があったからか、ほかの4人を引っ張っている感じでしたね」(石田さん)
Jr.時代の下積みが長かった彼らにとって、ハードな仕事は普通だったのだろう。
「“スタッフが自分たちのために動いてくれている”という意識を持っていたのかもしれません。きつい現場でしたが、いつも冗談が飛び交う和やかな雰囲気でした。青春映画ですし、短期間のスケジュールだったので5人で突っ走ろうという思いだったのではないでしょうか」(石田さん)
メンバー全員で出演した映画は大成功に終わる。この勢いのまま順調に国民的アイドルへの階段を駆け上がっていった……わけではなかった。強力な“ライバル”が現れ、5人の“弱点”が浮き彫りになったことで、不遇時代を味わうことになったのだった─。