ぶっ飛んだ設定でも山田が演じると、「こういう男がいるのかも」と思わせてしまうから不思議だ。一方、『青のSP』で演じている三枝弘樹のようなマジメな刑事役もそつなく演じられる。

 つまり、普通の教師や刑事を演じられるのはもちろん、必要とあらば、悪に振り切った二面性を見せられるから、おのずと他の同年代俳優より出演作は増えていくのだ。

「断らない」スタンス

 次に、少し見方を変えて、キャスティングのポジションという観点から、この1年の出演作を振り返ってみたい。

 教師役の『ホームルーム』と『ここは今から倫理です。』では主演を務め、『先生を消す方程式。』も田中圭に次ぐ準主演で、黒幕を務めた。一方、刑事役の『特捜9』と『青のSP』では、主人公刑事役の井ノ原快彦と藤原竜也を支える助演を一歩引いた立場からまっとうしている。

 山田のようなアラサーが適齢期の教師役では堂々の主演を張り、年上世代が主演を務めることの多い刑事役では助演として主演をサポートしているのだ。

 これは「主演と助演を務められ、それを使い分けられる技量と器用さがある」ことを意味している。教師役と刑事役を交互に演じているのはたまたまだろうが、短期間での演じ分けを実現させられる同世代の俳優はなかなかいない。

 山田はイケメン俳優のカテゴリーに入れられることも多いが、もはやそんな枠組みが必要のない段階に入っているのではないか。まさに充実期であり、「基本的にオファーを断らない」という活動方針もあって、今後も出演作は途切れず主演・助演の両面での活躍が見られるはずだ。

 まずは16日スタートの『ここは今から倫理です。』に注目してみてはいかがだろうか。山田自身、「自分が演じる高柳に出会って、発する言葉にここまでシンクロを感じる人間もなかなかいないだろうなと」「普段自分が思っていることを、高柳を通して伝えられる気がして、役を生きる中で自分の心を伝えられる作品に出会えたことにものすごく感謝しています」と強い手応えを感じていることが何よりの品質保証だ。

木村隆志(コラムニスト、テレビ解説者)
 ウェブを中心に月30本前後のコラムを提供し、年間約1億PVを記録するほか、『週刊フジテレビ批評』などの番組にも出演。各番組に情報提供を行うほか、取材歴2000人超の著名人専門インタビュアーでもある。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』など。