宝石のようなきれいな青い目
海外の俳優で印象的だったのは、丸の内の東京商工会議所ホールで開催された第3回フランス映画祭でお会いしたアラン・ドロンさん。1960年に『太陽がいっぱい』が公開され、彼の人気が日本でも高まったことを受け、'63年に初来日した。
映画評論家の岡田真吉先生の計らいでお会いすることができたのだけれど、ちょっとした裏話があるの。岡田先生は有馬稲子さんを贔屓にしていたのだけど、有馬さんが中村錦之助さんと結婚('61年)してしまったことで方向転換して、私に目をかけてくださるようになった(笑)。
棚からぼたもちではないけれど、その結果、私は飛ぶ鳥を落とす勢いのアラン・ドロンさんに会うことができた。挨拶を交わすと、宝石のようなきれいな青い目を上目遣いにして、下からじっとのぞき込まれた。そして、そっと手にキスをしてくれた。
美輪明宏さんも印象的な人だった。神話でいう両性具有という感じで、妖しい美しさに包まれている。その一方で、声は男性的でハリがある。『ヨイトマケの唄』を聴くとよくわかるけど、とても力強い声をしているのよね。
TBSの『新伍のお待ちどおさま』('85年~'90年)という番組で、たびたび美輪さんがゲストでいらしていて、収録が終わると2人で買い物を楽しんだりしていたのは、いい思い出。
美輪さんが運転する車の助手席に乗せてもらって、いろいろな場所を回るんだけど、運転マナーの悪い車に遭遇すると、美輪さんは突然“男性”になって、窓を開けて「この野郎! どこ見て走ってんだ!」なんて言ったりする。
ハンドルを握っている指はすらっとしていて、いかにも優雅なマダム的なのに美輪明宏という人物は、本当に魅力的で面白い“元美少年”よ。
《構成/我妻アヅ子》
ふじ・まなみ 静岡県生まれ。県立三島北高校卒。1956年NHKテレビドラマ『この瞳』で主演デビュー。1957年にはNHKの専属第1号に。俳優座付属養成所卒。俳人、作家としても知られ、句集をはじめ著書多数。