「ジャンルが成熟してくると、商品や作品を作る“マニュアル”ができてきますが、成長期は一個人の力が非常に大きいため、個人と個人の結びつきでものを作っていくことが多かった」
と、宝泉氏。確かに'60年代から'70年代の歌謡曲の成長期を振り返ると、
「ヒット曲メーカーの作曲家や作詞家が、曲を提供していたアイドル歌手と結婚したこともありました。歌唱指導や曲の打ち合わせなどで、ともに過ごす時間が長ければ、お互いのプライベートでも入ってきますよね」
このように関係が近くなればなるほど、師弟から恋愛へと発展するケースが増えるのも納得できる。
キャリア差カップルの
破門まがいの離婚
13歳年下の大澄賢也と結婚した小柳ルミ子も、忘れてはいけない師弟カップルだろう。ほぼ無名のダンサーだった大澄に光を当て、ダンサーとしてだけではなく、芸能界で活躍できるタレントにまで押し上げた小柳の功績は、まさしく名伯楽と呼ぶにふさわしい。
「13歳という年の差以上に、10代から活躍している小柳さんは結婚時、すでに芸歴約20年のベテラン。対して、大澄さんは芸歴0年に等しい。キャリアの差で考えると、親子ぐらいの差がある」(宝泉氏)
キャリアに開きがあるからこそ師弟として成立しやすく、関係性も安定する。しかし、弟子が成長してしまうと、その関係は崩れてしまうもの。“師匠に頼らなくても、自分は立派にやっていける”と、ふたりに軋轢が生じるのは、想像に難くない。
結婚直後は、夫婦ともにテレビ出演やステージを行うなど、年の差おしどり夫婦として立ち振る舞っていたが、'00年に離婚。11年の結婚生活だった。前出の芸能記者はこう話す。
「大澄さん自身が告白していますが、小柳さんから離婚の条件として、高額の慰謝料を支払うか、それができないなら結婚以前の無名のバックダンサーに戻るかの、二者択一を迫られたそうです」
結局、大澄は1億円ともいわれる慰謝料を支払うことになった。
「小柳さんからすれば“誰のおかげでここまで稼げるようになったと思っているんだ”という思いがあったのでしょう。そうじゃなければ、こんな二択を迫らない。彼女にとっては、破門に近い要求だったのでしょう」
師弟カップルというよりも、ここまでシビアだと徒弟カップルと言いたくなるかも……。