きれいごとの言葉が、スポーツ紙を飾る年度替わり。

「いつごろからでしょうかね、番組降板を“卒業”と言い換えるようになったのは」

 とスポーツ紙記者は自戒気味に首をひねる。

「局アナが番組を降りる際は、それこそ“卒業”でいいと思います。社員であれば次の番組があり、食いっぱぐれはないわけですから。芸能人の場合はそんなお気楽なことではない。稼ぎが減るわけですから。にもかかわらず、番組終了を一緒くたに“卒業”なんてあいまいな言葉にしてしまう。芸能メディアの表現が硬直していますよねぇ」

別番組で漏らした小倉智昭の本音

 今年度で番組が終了するフジテレビ『情報プレゼンター とくダネ!』の小倉智昭キャスター(73)が先日出演した『ボクらの時代』(フジテレビ系)での本音発言に対し、同局内で、

「よくオンエアーした、えらい」

 という声が上がっているという。

「今年1月『とくダネ!』が終了するというスポーツ紙の報道を受ける形で番組で説明した小倉さんは、『次の世代の人にキャスターのポジションを譲って』『新たな人に始めてもらうのがいい』などと、“公式見解”を伝えていたんです。ところが、『ボクらの時代』では本音が出たんです」(前出・スポーツ紙記者)

 そこで小倉は、

「後進に道を譲った、みたいなきれいごとになっているけど、本音で言うとそうじゃないよね」

 と本音をぶち上げたのである。さらに「スタジオで死んでやろうかくらいに思っていたくらいだからさ」と、この先も続けたいことを匂わせていた。きれいごとの元を作ったのは自分の発言である、ということは棚に上げて、だが、そこは不問にして本題に戻る。

 番組としてはその発言をなかったことに編集することはできたが、

「発言は小倉さんのメッセージ。それをなかったことにはできなかったそうです」

 と情報番組スタッフが伝える。その真意は、

「もともと『ボクらの時代』は、MCも台本もなく、芸能人が本音をしゃべるという点が魅力。せっかく小倉さんが本音を漏らしてくれたのに、カットはできないわけです。万が一、カットした内容が週刊誌に漏れれば、フジテレビの情報統制などと騒がれてしまいますからね」

 かくして表面化した小倉の“公式見解”と“本音”の違い。

 前出・スポーツ紙記者は、

「その発言には、スポーツ紙の見出しに対するちょっとした皮肉が込められていると同時に、自身が当初発した“公式見解”が局側の意向を忖度したものだと自己告発したものなんです。そう読み解くと腑に落ちると言いますか」

 独特の視線がウリだった小倉の、自分自身の進退にまつわる毒を含んだコメント。スポーツ紙をかつて席巻した「できちゃった婚」は今やすっかり影を潜め「おめでた婚」などときれいごとに変わった。

 それとは逆のベクトルで、“卒業”なるきれいごとの言葉がしっかりと、出演者の意向を反映した“降板”になることがあれば、小倉の発言も面目躍如の一矢にになる。

〈取材・文/薮入うらら〉